
(おち・ふみお)1957年12月札幌生まれ。北大法学部卒業後、北海道電力入社。97年電気事業連合会企画部時代にCOP3に立ち合い、2008北海道洞爺湖サミット環境総合展事務局長。環境問題・エネルギー問題・危機管理の専門家。日本省エネルギー推進連合会長、札幌なにかができる経済人ネットワーク主宰
| ネットフリックスで細木数子氏の生涯を描いた「地獄に堕ちるわよ」が大ヒットしている。先月、地獄に堕ちそうな人たちが大勢摘発される談合事件が発覚した。LED化をめぐっても全国で不正な入札が行なわれており、警察も捜査を始めている。 |
北海道民にとっての悲願である北海道新幹線の札幌延伸は、田中角栄の日本列島改造論以来の国土開発において、最後に残された大仕事である。
しかし、ここにとんでもない事件が発覚した。函館から札幌まで5区間に分けて工事をしているそのすべてで、工事会社による談合が行なわれていたというのだ。
全国的にはあまり知られていないが、北海道新幹線札幌延伸には一つの曰くがあった。当初は安倍政権時代に、2030年の札幌オリンピック開催に合わせて開業させようという政府の計画のもと、北海道経済界が一丸となって進めていた。しかし、東京五輪を巡る電通の談合事件により札幌が冬季五輪の招致候補から外れ、地元の機運は一気にしぼんでしまった。その後、突然「大きな岩盤層に当たった」という理由で2038年まで延期と発表され、現時点では札幌まで届くのがいつになるか分からないというのが、JR北海道の見解であった。
そんな馬鹿な話があるだろうか。青函トンネルも黒部トンネルも、リニアモーターカーも高速道路のトンネルも、岩盤が硬いという理由で中止になった例はどこにもない。
国際ジャーナリスト・堤未果氏の著作に『国民の違和感の9割は正しい』というベストセラーがあるが、オリンピック誘致がなくなった途端に岩盤層に突き当たって無期延期になったという違和感の答えが、この建設談合であったのかと合点がいった。
全国で9社しかいない掘削会社が談合し、ゆっくりと、そして値段を高く高く工事を進めようとしているのだから、いつまで経っても札幌まで届くわけがない。これを犯罪と言わずして何と言うのだろうか。
昨年12月には、建築費や資材費の高騰を理由に費用が1.5倍になり、1兆2000億円の予算増となることが発表されていた。この予算は誰が作ったのか。この犯罪企業たちに、どれだけの税金が使われてきたのだろうか。この実態を知っていながら放置していただけでなく、不正入札に関与していた疑いで、鉄道建設・運輸施設整備支援機構にも独占禁止法および官製談合防止法違反で公正取引委員会の立ち入り調査が入っている。
「談合なんて当たり前だ。どうせ税金である。入札不調になるよりは、こいつら業者に任せておいた方が良い。いつまでかかろうと、どれだけ高くなろうと知ったことではない。昔からやっていることだ」
もし公務員がこう思って実態を知りながら見て見ぬふりをしているならば、それは官製談合と同じである。仮に土木業者から饗応を受けたり、お歳暮を受け取ったりしていたならば、即逮捕される案件だ。
私の自宅は、この札幌新幹線駅の予定地が見えるマンションにある。毎朝、新駅の工事進捗を楽しみにしていたが、もう私が生きているうちに東京へ新幹線で通う夢は叶わないだろう。北海道の観光も経済も産業も、沿線自治体や札幌の地域開発も、これで20年は遅れることになる。
「自社の利益のためならば犯罪を犯しても良い」「法律違反であっても皆がやっているから良い」「バレなければ何をやっても良い」「会社の命令だから仕方がない」「上司の命令だから逆らえない」「前任者や同僚を裏切れない」「談合なんて当たり前だ」「これが仕事だ」と嘯いている人間は、少しも良心の痛みを感じていないのだろうか。おそらく、まったく感じていないのだろう。
世の中を甘く見ていると一生を棒に振り、地獄に堕ちることになる。
逮捕され、失業し、妻子に軽蔑され、一家離散して生活困窮者になる。友人とも顔を合わせられず、一生後悔するほどの恐ろしいことを、犯罪だとも思わずにやっているのである。
AIで調べたところ、2026年度当初予算にLED化が盛り込まれた自治体は650あるという。すでに4月だけで250の入札公示がされたが、その中身を分析すると怪しい入札がぞろぞろと出てくる。
指名競争入札という仕組みで初めから競争を除外したり、そもそも公示日から申込不能な日程を設定している。入札参加資格を厳しく縛り、特定のメーカーや電気工事会社でなければ参加できないようにしてあるものが多く存在する。
経験のない地方公務員が、メーカーや建設業者に丸投げで入札要項や仕様書を作ってもらっている自治体もあった。任されたメーカーは当然、自社製品以外は採用できない仕様書を作成する。電気工事組合が談合し、公共工事単価として民間相場の何倍にもなる工事費を設定するところもある。組合自体が入札参加者として立つことを許すという、独禁法違反やり放題の文化を持つ自治体もある。建築系のリース会社が地元工事会社を事前に囲い込んでおき、落札後に別の安い直営会社を連れてくるという、どっちもどっちの騙し合いもある。ある市立病院では、6社による指名競争を行ないながらも、製品仕様で特定のメーカー製品に制限してしまった。そのため、この照明メーカーが1社と結託して他の5社を辞退させ、入札金額乖離率99.8%という見事な談合成果を上げている。およそ98%以上はほとんど全て談合だと思うべきである。
首長選挙が近づくと、支援団体である建設業界が喜ぶような「美味しい入札」が乱発されるのもよく見る光景だ。当選祝いで「天の声」でも降ってくるようならば、公職選挙法違反で逮捕され、全国版のスキャンダルになる。地元企業に便宜を図った収賄議員が逮捕されたニュースも、全国で流れた。
今、激動の国際情勢の中で、国難とも言える事態が次々と起きている。物価高騰やエネルギー危機で苦しんでいる国民、市民、町民の血税を無駄に使い、分け捕りにする行為は許されない。電気代を払えずに食費を切り詰め、熱中症になりかけながらもクーラーを節約している高齢者、母子世帯、生活保護世帯も税金を払っている。資材不足で倒産寸前の零細企業であっても、社員の給与を切り詰めて納税している。
そうして納められた税金を、メーカーや大企業が不正に使っているのである。企業は生き残るためならどんな不正をしても良いわけではない。こんな混乱の時代だからこそ、正しいルールで公正に、かつ合理的に仕事を進めなくてはならない。
自治体の入札に対しては、公正取引委員会も警察も注視し、内偵を進めている。メディアも特ダネを狙っている。不正や法律違反は必ず内部告発される。心当たりのある方や、不正に巻き込まれかねない立場にある公務員の方は、十分に注意してほしい。
入札公示の準備をしている方は、あかりみらいホームぺージを参考にされたい。おかしなことに巻き込まれないよう、しっかりと勉強しておくべきである。
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