医療現場で散った命⑲
日本赤十字 和解拒否

2026年07月号

長く続いた裁判がさらに長引くことになり、しかしながら原告の村山豊作さん・百合子さん夫妻は「決して落ち込んではいない」という(5月15日夕、釧路市内)

看護師自殺めぐる協議が決裂
遺族の裁判が口頭弁論再開へ


早ければ本年初頭にも解決をみる筈だった争いの結着が、またしても遠ざかった。新人看護師が医師によるハラスメント被害を訴えて自ら命を絶った事件。遺族が起こした裁判で、原告と病院側との和解協議が物別れに終わることとなったのだ。裁判所が提示した和解案を被告の日本赤十字社が受け入れなかったことで、争いの長期化は必至。引き続きの闘いを余儀なくされた遺族は、改めて「職場に安全・安心を」と、医療現場のハラスメント防止を訴えている。

取材・文=小笠原 淳

失意の遺族「理念どこへ」


 5月15日夕、釧路市内。
「人道とか博愛とかを理念としている日赤が裁判所の和解案に応じないというのは、いかがなものかと」
 室蘭市の村山豊作さん(73)・百合子さん(70)夫妻が、率直な疑問を口にする。長く続く裁判の支援者たちを前に報告したのは、被告側との和解協議が決裂した顛末。本来であればその集まりは、争いの終結を確認する場になる筈だった。
「これからももう少し長い期間、皆さんのお力をお借りすることになると思います」
 本年初頭にも成立する見込みだった和解終結は、その要件をめぐって一度ならず先送りされ、結果的に白紙となった。裁判所が示した和解案を被告が受け入れなかったためだ。
 原告・村山さん夫妻の長男が自ら命を絶ってから、まもなく13年。その人が勤務していた釧路赤十字病院(日本赤十字社)は、指摘されるハラスメントなどの安全配慮義務違反を否定し、遺族と真っ向から争うことを選んだようだ。
 

2つの裁判で足かけ14年


 新人看護師の村山譲さん(当時36)が釧路日赤の医師によるパワハラを訴えて自殺し、遺された両親が真相解明や再発防止を求めて複数の裁判を争い続けることになった経緯は、2017年以降の誌面でたびたび伝えてきた通り。遺書などを通じてハラスメント被害を確信した両親は、当局に労働災害申請を退けられて行政裁判を提起する。最高裁判所まで争われたその訴訟しかし、遺族側の実質敗訴で労災不認定処分が確定。そこで膝を屈しなかった村山さん夫妻は23年8月、病院の安全配慮義務違反を追及する裁判を起こす。この時点で、譲さんの急逝から10年ほどが過ぎていた。

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