
返還運動の現在と未来を語り合った角鹿さん(右)と時野さん(12月22日午後、根室市内)
戦後80年の節目の年だった2025年。北方領土問題はロシアによるウクライナ侵攻以降、膠着状態が続き、元島民は高齢となりすでに多くが鬼籍に入った。以前より北方四島が遠のいたかの印象がある中、元島民の後継者らで組織する「かけはしの会」の新会長に元島民2世の時野春美さん(57)が選ばれた。80年という節目を踏まえ、今後に向けて北方領土返還運動をいかに次の世代に承継し、どう進めていくのか──。時野さんと千島歯舞諸島居住者連盟根室支部長の角鹿泰司(つのか・やすじ)さん(88)に語り合ってもらった。
(佐久間康介)
──時野さんが、北方領土返還運動と関わるようになったのは。
時野 中学校2年生の時に、根室市少年少女弁論大会の北方領土の部に出場して、準優勝したことが最初の関わりです。自分が元島民2世だということを知った時期ははっきりとは覚えていませんが、母は昭和18年に択捉島で生まれた元島民です。まだ小さかった母は当時の記憶がほとんどないので、島のことは元島民の叔父達に話を聞きました。
──弁論大会が時野さんにとって返還運動の原点だと。
時野 そこが始まりではありますが、高校卒業後に根室を離れてしまい、実はそれ以降は関わっていませんでした。20代前半で根室に戻りましたが祖父母は既に亡くなっており、何か供養できることはないかなと考え、北方領土返還運動に関わりたいと思うようになりました。でも、いざ関わろうとしてもどうしたら良いのか分からないまま時間だけが過ぎてしまいました。そんな思いの中、2021年に、あるボランティア活動に参加した事がきっかけで択捉島の元島民後継者の方に出会いました。「一緒に活動しませんか」と声をかけていただき返還運動に携わるようになりました。私の本当のスタートはそこだと言えます。
──実際に運動に関わってみて、どのように感じていますか。
時野 もっと早くから参加できていたら良かった。そうしていれば祖父母にも話を聞けたのではないか、祖父母の想いをもっと伝えることが出来たのではないかと。戦後80年が経過して元島民の方が他界されていくのを耳にするととても残念です。かけはしの会で行なっている事業では、元島民の島での生活や子供の頃の思い出を音声やマンガ動画にしてYouTube配信しています。今からでも元島民に積極的にお話をお聞きして、北方領土問題を風化させないためにもひとりでも多くの人に伝えていきたい。