
網走市長 水谷 洋一氏
Mizutani Youichi
今年2月に「人と環境に優しいスマート庁舎」を基本理念とした市の新庁舎が中心市街地にオープンし、11回目を迎えた「オホーツク網走マラソン」では初めて47都道府県全てからランナーが集い、スポーツ交流と観光資源を結び付ける独自のスタイルを印象付けた。こうした明るい話題に沸いた網走市だが、一方で秋サケ定置網漁の不振や雨不足による小麦などの不作といった一次産業の懸念も取り沙汰される。市民が集う新たな交流拠点として期待される市役所に水谷洋一市長(62)を訪ね、4期目も残すところ1年となった同氏にまちの現状と展望を訊いた。
(10月16日取材)
|交流拠点の「スマート庁舎」で賑わいと経済波及効果を創出|
──本年2月25日から新庁舎の供用が開始されましたが、長年親しんだ旧庁舎への感慨もあるのでは。また跡地利用についての考えは。
水谷 60年もの間、職員や市民の皆さんが通った旧庁舎から引っ越す前日、職員には「心新たに歴史を積み重ねていこう」と話をしました。
その旧庁舎の敷地には「網走外三郡役所跡地」という石碑が建っています。網走のほかに斜里、常呂、紋別の郡役場の跡地で今の振興局の原型がそこにありました。昔から行政の中心であった場所に旧網走庁舎が建っていたわけです。
そのような来歴もあり、「網走市都市機能誘導構想検討協議会」が昨年3月に策定した「網走市都市機能誘導構想提言書」には、網走開発建設部や網走海上保安署などの国の出先機関を旧庁舎跡地に集約するという提言が盛り込まれています。
私も歴史のある場所に相応しい建物を作るべきではないかとの思いがあり、その方向で進めていきたい。
──新庁舎は「人と環境に優しいスマート庁舎」を標榜しています。
水谷 建物は震度7までの地震に耐えられる設計で、鉄筋コンクリート造りの5階建て。延べ床面積は約6千平方メートルあります。1階と2階は行政手続きなどで市民が訪れるフロアで3、4階に事務機能を集約しました。5階の議場は地震や大雨の時に近隣住民の一時避難所として使います。
中心市街地は災害時に2階以上へ避難する「垂直避難」できる場が少ないため、緊急時には議場の席を全部取り外してそこに避難してもらいます。イベント広場でもある駐車場はプロ野球のパブリックビューイングや夏祭り、七福神まつりの会場としても使っています。
──駐車場をイベントに使うのはいいアイデアかと。
水谷 庁舎1階の市民ホールにはピアノが置いてあり、そこでも講演会やコンサートを開催しています。今後は市民によるジャズコンサートなども行ない、中心市街地に人が集まる場所にしていきたい。
──市役所周辺は網走信金や歓楽街も近い。新庁舎ができたことで、波及効果も期待できるのでは。
水谷 職員300人規模の新庁舎がこちらに来たので、昼食需要を含め人の出入りは多くなったと思います。この中央商店街の2丁先くらいに高規格道路の出口ができる計画があり、人とモノが集まり経済の活性化に波及してくると期待しています。
現在は、新規事業化された女満別空港─網走呼人間の調査設計が行なわれています。着工までしばらく時間がかかりますが、高規格道路を下りたら網走市役所があるというのはすごく便利で、人とモノが交流する結節点になっていくと思います。