
「ELVIA 北海道モデル」の外観
今年10月に創立50周年を迎えた北海道セキスイハイム(本社札幌・村松正臣社長)は、ハイエンド層に向けた高価格帯商品として鉄骨戸建て注文住宅「ELVIA(エルビア)北海道モデル」を10月30日から市場に投入した。世帯年収1500万円以上のパワーカップルや経営者、医師、弁護士などの高所得層を対象に札幌圏を中心に年30棟の販売を計画している。発表会見から同社の狙いと新商品の概要を紹介する。
(佐久間康介)
道内の戸建て住宅の新築市場は年々減少傾向で、資材高騰や職人不足の影響により減少に拍車がかかっている。そうした中で、利益が一定程度見込める5千万円以上の高価格帯の住宅にハウスメーカー各社は力を入れている。
道内の坪単価120万円以上の高価格帯市場では、住友林業(本社東京)、三井ホーム北海道(本社札幌)、積水ハウス(本社大阪)の3社が強く、北海道セキスイハイムはボリュームゾーンでの展開が中心だった。しかし住宅着工件数が減少する中で3社は高価格帯に力を注いでおり、北海道セキスイハイムでも今後の伸長が見込める分野として「ELVIA」を投入することにした。
同社はこれまでも「シェダン」「ザ・デザイナーズハイム」のラインナップで高価格帯にも足場を持っていたが、販売比率は全体の8%程度(25年度上期実績)にとどまっているため、今回の最高級モデルの投入で高価格帯のシェアを引き上げたい考えだ。
「ELVIA北海道モデル」は、「デザイン」「住性能」「住空間」を既存の高価格帯商品に比べても大きく進化させた。「デザイン」に関して、鉄骨ユニットを現地で組み立てた時に生じる1階と2階の継ぎ目(胴差しモール)や2階と屋根の継ぎ目をなくし、外壁が上から下まで連続したような外観にした。磁器タイルの外壁は、現行の1.7倍という大判加工タイル「ルミナタイル」を採用、タイル表面にガラス質をコーティングして焼成しているため、色の深みや素材感が増して高級感が出るようになっている。
また袖壁と庇をL型に配置してダイナミックなデザインとし、2階のテラスは最大3.3メートルの深い軒とすることで北海道では体験できない空間を提供できるようにした。インテリアについても、お気に入りのカフェやホテルのロビーのようにしたいという要望に応えるため、これまでの基調色にこだわらずにインテリアのイメージを優先して構築した内装を提案する。
「住性能」では、外壁に既存の高性能グラスウールに高性能フェノールフォームを追加することによって、グラスウール314ミリ厚相当の断熱性能を実現。屋根には既存の高性能グラスウールユニットにウレタンフォームを追加し、グラスウール477ミリ厚相当の性能を確保した。これにより断熱性能等級6を実現している。さらに屋根には、本州の積雪寒冷地で20年の実績があるステンレス屋根を採用し、アフターメンテナンス費用の低減も可能にした。
「住空間」では、同社では初めての全館空調システムを導入、第一種換気と全館空調システムを組み合わせて家中をエアコン一台で冬は温め、夏は冷やす快適な空間にすることができる。オプションで加湿ユニットを設置でき、冬でも30~40%の湿度を保てる。睡眠環境を湿度、温度、照明でサポートできるシステムも備えた。
モデルプランは延床面積35坪、坪単価150万円で総額5千万円強。北海道セキスイハイムの村松正臣社長は、「ELVIAには内外装デザイン、耐震、断熱で当社最高水準の性能を織り込んだ。この商品の投入により5千万円以上の高価格帯の販売比率を戸建て全体の10%強に高めたい」と意欲を述べ、「後手になっていた富裕層向けにELVIAを充当することで、商品のラインナップがかなり揃う。今まで当社があまり取れていない5千万円以上の高価格帯でも大手他社に引けを取らずに頑張っていけると思う。50周年を迎え、北海道の皆さんに喜んでいただける住宅づくりを今後も進めていきたい」と結んだ。
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創立50周年を迎えた北海道セキスイハイムは構造改革の時期を迎えている。25年4月のトップ交代で新社長になった村松氏は、親会社の積水化学工業(本社大阪)住宅カンパニー経営戦略部企画部長から就任したが、業界内では異例の人事とされている。前年の24年1月には開発部門を北海道単独から本州(積水化学工業住宅カンパニー北海道開発室)との連携体制にも変えた。今回の「ELVIA北海道モデル」は、こうした改革の中から生まれ、このほど発表の日を迎えたものだ。
ビジネスモデルも転換した。北海道セキスイハイムはこれまで大規模な土地を購入して「ウイズランド」の名称で、自社向けと他のハウスメーカー向けに土地を販売する「大規模仕入れ、大量販売」で成長してきた。しかし、昨今はこうしたビジネスモデルで在庫を抱える状況も生まれていた。50周年を機にこうした土地の大量仕入れとは一線を画す展開も始まっており、そうした中で満を持して今回の「ELVIA北海道モデル」が投入されたことになる。今後の高価格帯商戦の行方に注目だ。