12年目の新千歳空港国際アニメーション映画祭、さらなる高みへ
国内外から気鋭の才能が集う世界と地域を繋ぐ国際映画祭

2025年11月号

第12 回 新千歳空港国際アニメーション映画祭のメインビジュアル
Illustration by OSHIYAMA Kiyotaka

空港をまるごと会場にするという唯一無二の祭典「新千歳空港国際アニメーション映画祭」。エンターテイメント空港を標榜する同空港の環境資源を生かし切った数々のプログラムに、観客だけでなく参加したクリエイターからの評価も高い本映画祭、今年は例年よりも3週間遅く11月21日(金)から25日(火)までの5日間開催される。空港がクリスマス一色に染まる時期、北海道のハイシーズンである冬の訪れに寄り添う形だ。次の10年を見据えて一昨年から新たに動き始めた映画祭は12年目を迎え、新たな試みを大胆に取り入れ、さらなるステップアップを図る。さらに今年は、驚くような目玉がいくつか仕込まれているという。

アカデミー賞受賞監督が参加へ


 無料展示も含めた来場者の総計は昨年度およそ3万5千人。今や日本随一のアニメーションの祭典となった感がある新千歳空港国際アニメーション映画祭。今年のコンペティション部門の応募数は長編部門・短編部門・そして30seconds部門合わせて過去最多の2716作。これは国内単年度開催のアニメーション映画祭としては最大規模であり、国内外における存在感がますます大きくなっている。
 しかしなにより驚くべきは、今年度の新千歳空港映画祭にはこれまでにない大きな波が、それも2つたて続けに訪れることにある。
 そのひとつは、今年3月、第97回米アカデミー賞でハリウッドメジャー作品を抑えて長編アニメーション賞を受賞するという歴史的快挙により話題を呼んだラトビアのギンツ・ジルバロディス監督が国際審査員として本映画祭に参加すること。もちろん監督のアカデミー賞受賞作『Flow』も上映予定だ。実はジルバロディス監督の初長編映画『Away』は、2019年度の本映画祭コンペティション長編部門で審査員特別賞を受賞しているとのこと。今回の『Flow』のお披露目は、まさに凱旋上映といえるだろう。
 さらに今年度の映画祭メインビジュアルは、昨年6月に封切られ、1時間に満たない中編にもかかわらず20億円の興行収入を叩き出した話題のアニメーション映画『ルックバック』の押山清高監督が担当。ダイナミックな構図により描かれた新千歳空港の姿が館内を彩る。加えて、会期中にこの2人の対談も予定されているという。国内外で幅広い支持を受ける旬の才能が一堂に会す本映画祭ならではの機会だ。

地域と作家に寄り添う映画祭


 しかし本映画祭の特徴は、こういったアカデミックな側面だけにあるのではない。もうひとつの柱である、地元に寄り添った「地域のお祭り」としての展開も、今年度はまた一層深みを増す予定だ。
 国際線ターミナル2階直結のポルトムホールでは、今年も特に家族連れに好評の無料上映会が催される。いつでも出入り自由な上、人工芝の敷かれたくつろぎの空間も用意されているというスタイルは、家族連れで映画館へと足を運ぶことに気後れを覚える、幼いお子さんを持つ保護者の方々に好評だという。さらに本年の同会場では、誰でも簡単にコマ撮りアニメーション制作ができる体験イベントも実施予定だ。
 また、本映画祭を特色あるものとして際立たせているコンペティション「30seconds部門」は、空港内各所に配されたデジタルサイネージにて上映される。地域の遊び場としての役割も担う新千歳空港に訪れる、あらゆる世代の誰もがさまざまな作品に触れることができる。まさに空港全体を会場にした、本映画祭ならではの展開だ。
 また、クリエイターを対象とした取り組みに目を向けると、新たな展開として「NEW CHITOSE AIRPORTテイクオフ・アニメーション・セミナー」が今年から行なわれるという。これは前回まで若手アニメーション制作者を対象に実施していた公開プレゼンテーションの場である「NEW CHITOSE AIRPORT PITCH」の幅を広げ、自身の構想や作品を発表する機会の提供だけでなく、さらに会期中の上映作品に触れたり、それらの制作者との交流の場を設けることでより多角的に支援を図るという試み。
 さらに、より地域に根差した映画祭を目指し、空港開港百周年を記念して映像アーティスト大島慶太郎監督のもと市民が参加するアニメーション制作プロジェクトとの連携も始まっており、そのお披露目も予定されているとのこと。
 国際的な評価の高まり、そして地域に寄り添うさまざまな試み。この2つを両輪とし、第12回新千歳空港国際アニメーション映画祭はさらなる躍進に向けて11月21日金曜日から力強く走り出す。
 世界と地域を繋ぐこの無二の祭典について詳しいプログラムのチェックとチケット購入は、公式ウェブサイト(※『新千歳 映画祭』で検索)を。

ギンツ・ジルバロディス監督による第 97 回米アカデミー賞長編アニメーション賞受賞作『Flow』
©︎Dream Well Studio

ギンツ・ジルバロディス監督による第 97 回米アカデミー賞長編アニメーション賞受賞作『Flow』
©︎Dream Well Studio

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