ウェルビークリニックが札幌市内で再出発
在宅患者を支える訪問診療で家庭で過ごす喜びを届けたい

2025年11月号

患者から贈られた絵画の前で笑顔を見せる粟田院長(ウェルビークリニックで)

(あわた・まさき)1973年大阪府大東市出身。近畿大学医学部卒。大阪府立千里救命救急センター、兵庫県の関西ろうさい病院、大阪大学医学部附属病院を経て渡道。オホーツクの広域紋別病院、帯広の開西病院に勤務し、2023年4月札幌市中央区に内科・在宅訪問診療のウェルビークリニックを開院。25年9月現在地に移転。医学博士。日本内科学会認定内科医、日本循環器学会循環器専門医、日本専門医機構救急科専門医、日本心臓血管インターベーション治療学会専門医、終末期ケア専門士。51歳

Medical Report

複数の疾患を抱えながら医療機関に通うことが困難な患者を総合的に診る在宅訪問診療の必要性が高まっている。このようなニーズに応えるべく一昨年、札幌市内で開業し、このほど移転・再出発を果たしたのが「ウェルビークリニック」だ。循環器内科の専門医で総合診療も手掛けてきた粟田政樹院長(51)は、「高齢や病気などで通院できない患者さんを助け、尊厳ある最期を迎えられるようサポートしたい」と話す。アットホームなチームワークが光る同クリニックを紹介する。

(9月22日取材 工藤年泰・武智敦子)

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辿り着いた在宅訪問診療


 2023年4月に札幌市内に開院したウェルビークリニックが現在地に移転したのは今年9月1日。クリニックの上階は粟田政樹院長の住居になっており、患者から連絡があれば即座に対応する体制を整えた。
「これまでの心臓カテーテル診療では緊急対応を苦にしない生活を送ってきたので、基本的に患者さんには24時間対応しています。診ている方々は認知症が多く、高齢や腰痛などで通院できないケース、長期間の入院で足腰が弱った廃用症候群の方もいます。病気は細分化されがちですが、家庭医としてその人を丸ごと診ています」(粟田院長、以下同)
 最近は複数の疾患を抱え、別々の病院で処方される薬が重複するポリファーマシーの問題も浮上している。
「薬が重なりすぎると体に負担をかけたり、薬が影響し合って効果が弱まったりします。また飲み忘れや間違いにもつながります。こうしたリスクを減らすために、病院から処方された薬を確認し、本当に必要な薬だけを整理することも訪問診療の大切な役割だと考えています」
 高齢者の中には多重服用による副作用で食欲が著しく低下する人も少なくない。粟田院長が実際に診てきた患者でも食が細くなり危険な状態になっていたケースがあった。そこで、どうしても必要な薬を除いて服用を中断するよう指導すると、食が進むようになり元気を取り戻した。
 現在、150人ほどの患者を訪問診療で診ている粟田院長だが、今後取り組んでいきたいのは、もしもの時にどのような医療やケアを望むのかについて元気な時に考え、家族や医療従事者らと話し合い共有する「人生会議」(アドバンス・ケア・プランニング=ACP)だという。
「日本人は海外と違って元気な時に死について考えようとする文化がありません。何かあった時の治療、延命についてどこまで望むのかをはっきりさせた方が家族に負担がかからない。日々の診療を行ないながらACP的な相談にも乗っていきたい」
 粟田院長は1973年、大阪府大東市出身。産婦人科医の父の背中を追い、将来は医師になるのが夢だった。しかし、反抗期の頃は後継ぎと見られるのが嫌で「医者にはならない」と言い張っていたことも。粟田院長はこの時期を「父への憧れと反抗がせめぎ合っていた。でも内心では医者になりたかった」と振り返る。
 大学卒業後は救急医を目指し、大阪府立千里救命救急センターで研修医として働き始めた。3年目には経皮的冠動脈インターベーション(PCI)と呼ばれる「心カテーテル治療」のスペシャリストを目指し、兵庫県尼崎市の関西ろうさい病院に赴任。心カテ治療で有名な南都伸介医師の下で研鑽を積んだ。
 その後、大阪大学医学部附属病院で勤務し、高度な専門治療を追求する一方で、家庭医としても活躍する父の後ろ姿を思い出し、地域医療への想いが膨れ上がった。気がついたら医師になって20年が経過していた。若い頃、救急医を目指したのはどんな病気でも診ることのできる医師になりたかったからだ。大自然が好きでよく訪れていた北海道での地域医療を考え始めると、看護師経験がある妻は快く背中を押してくれた。
 そうしてオホーツクの広域紋別病院で2次救急や住民のプライマリーケアを担い、その後は帯広市の開西病院で高齢者を多く診てきた。こうした経験を踏まえて2年前、札幌市中央区に開院したのが内科・在宅訪問診療のウェルビークリニックだ。
 終末期の患者にどう接するかを学ぶため「終末期ケア専門士」の資格を取得するなど、粟田院長は患者に寄り添う医療の追求に余念がない。息の合った看護師2名、そしてドライバー役の妻の智子さんとともに、粟田院長は今日も患者宅に向かう。

妻の智子さんもスタッフとしてクリニックを支える

訪問先で診療に当たる粟田院長

妻の智子さんもスタッフとしてクリニックを支える



内科・在宅訪問診療
「ウェルビークリニック」

札幌市中央区南3条西22丁目2の1(2階)
☎:011-676-8907
HP:https://wellvy-clinic.com/

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