道東の小さなまち中標津町の大きな挑戦
酪農に見えてきた曙光

2025年09月号

7月下旬にあった中標津神社のお祭りで踊りを披露する日本語学校のミャンマー人の学生たち。日本語を学びつつ地域社会に溶け込んでいる

乳業大手2社が工場を新設・増設
若者と外国人が支えるまちづくり


コロナ禍での生産抑制やウクライナ戦争による飼料高騰などで地盤沈下した酪農が、根室管内の中標津町(西村穣(ゆたか)町長)で再生の時を迎えている。乳業大手2社が工場を新設・増設を決め、20代の若者や外国人材が復興の一端を支える。人口減少の波に洗われる道内の自治体の中で気を吐き、識者から「中標津モデル」として注目される同町の活気を帯びた現在をレポートする。

取材・文 岡野 直(おかの・ただし)
1960年札幌市出身。東京外語大学ロシア語科卒業。85年朝日新聞社入社。2021年からフリー。ロシア語の全国通訳案内士。近著に『戦時下のウクライナを歩く』(光文社新書)。65歳

中標津で始まった反転攻勢


 中標津が舞台の映画『遥かなる山の呼び声』で、山田洋次監督は夫に先立たれた孤独な女性酪農家の哀愁を描いた。主役の倍賞千恵子の牛小屋は狭く、牛も10頭足らずだった。
 この映画の予告編冒頭のタイトルバックに「北海道 さい果ての春」の文字が流れる中標津だが、当時の撮影ではスタッフの移動が大変だった。東京から空路で札幌へ、鉄路でさらに釧路へ、そこから車で中標津へと1泊2日かかった。撮影は1970年代、公開は1980年である。
 平成に入り、中標津と羽田を結ぶ直行便が就航。空路で1時間半余り、根室中標津空港から市街地まで車で10分で着く。東京からは新千歳空港経由の札幌より近い印象だ。人口は約2万2千人ながら大型ショッピングセンターが2つある。そのひとつ「東武サウスヒルズ」は延床面積がエスコンフィールドのグラウンドの1.7倍の1階建てで、マクドナルド、ケンタッキー、ピザハット、ミスタードーナツなどが入居。内部のスーパーにはコストコの輸入商品も置かれている。
 店舗に隣接する回転寿司では知床直送のホタテやホヤが食べられる。フレンチも街中に道東唯一のミシュラン星つきのレストランがあり、「美食の町」となった。ユニクロ、ニトリ、大型電器店もあり、ないのは映画館くらいなもの。「ミニミニ札幌」と呼ばれる所以だ。

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酪農家のパーラーで搾乳の準備をする酪農ヘルパー。ベトナム人のフンさん(右)と引地楓菜さん(7月21日、中標津町内)

7月の中標津町民との交流行事で、語学などについて語り合うベトナム人国際交流員のグエンさん(中央)。昨年から中標津町経済振興課に勤め、町内に住む外国人のネットワークを作ろうとしている

取材に応じる西村町長

酪農家のパーラーで搾乳の準備をする酪農ヘルパー。ベトナム人のフンさん(右)と引地楓菜さん(7月21日、中標津町内)

7月の中標津町民との交流行事で、語学などについて語り合うベトナム人国際交流員のグエンさん(中央)。昨年から中標津町経済振興課に勤め、町内に住む外国人のネットワークを作ろうとしている

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