【シリーズ・住宅不動産情報】㉛──北海道ハウスメーカー協議会・鳥山達己会長に訊く
客への貢献目指して7社がタッグ
共同で土地仕入れや展示場活性化
「お客様に貢献することが協議会の設立目的」と話す鳥山会長(6月12日、ミサワホーム北海道で)
(とりやま・たつみ)1965年札幌市生まれ、札幌学院大学卒。88年4月ミサワホーム北海道入社。旭川での2年間勤務を除いて札幌で営業一筋。2024年取締役常務執行役員に就任。60歳
今年4月、全国大手ハウスメーカー7社で組織する「北海道ハウスメーカー協議会」が発足した。これまでの業界事情から一堂に集まることができなかったが、昨今の住宅価格高騰や住宅展示場の来場者減少を受けた危機感が7社の背中を押した形となった。共同で土地の仕入れや販売促進に取り組み、発注や物流の共同化も模索する。初代会長に就任したミサワホーム北海道(本社札幌)の鳥山達己常務(60)に協議会の目的や活動方針を訊いた。
(佐久間康介・工藤年泰)
土地価格高騰に共同対応
──北海道ハウスメーカー協議会が発足しましたが、これまであってもおかしくなかった。
鳥山 全国系ハウスメーカーの間では、これまでさまざまな歴史的な事情から協議会を作る機運が高まらなかった経緯があります。今回の発足のきっかけは、数年前に住友林業の札幌支店長に赴任された熊田則夫さんに、ある展示場の会議でお目にかかり、「全国の各地域に協議会があるので、札幌でも作りませんか」と声を掛けられたことでした。
しかしその後、コロナ禍になり、なかなか身動きが取れなくなった。ただコロナ渦中でも協議会設立に向けた機運は衰えず、今回、熊田さんと大和ハウス工業北海道支店長の新谷聡さんが発起人になって、全国系7社が集まり正式に発足に至ったという経緯です。
──協議会設立の目的は。
鳥山 北海道の住宅業界では、土地と建物を同時に買う一次取得者が7~8割を占めるので、ハウスメーカー各社にとって土地の仕入れが業績に直結します。しかし、土地の仕入れを各社が単独で行なうには、住宅地不足などによって以前より難しい状況になっている。
こういう中で土地情報の共有化を図り、共同仕入れの道を探るのが協議会の狙いのひとつでもあります。ただ、各社が長期間にわたって仕込んできた土地もありますから、それはそれで尊重したいと思います。協議会のテーブルに全てを載せるような縛りを設けるつもりはありません。
──協議会は分科会も設けている。
鳥山 大きく分けると不動産系と営業系の分科会を設けていて、不動産系は、先ほど言ったように土地情報などの共有化を進めます。営業系は、いかに住宅展示場の集客を図るかを議論していく場にしたい。
5月のGW明けにはミサワホーム北海道が開発している「ルシアガーデン平岡」で大和ハウス工業、住友林業、ミサワホーム北海道による3社共同イベントで集客を図りました。3社の名前が出ることによって集客力は大きく違ってきます。
今後は、来る9月に予定されている北海道住宅フェアへの共同参加や来年のGWにJR北海道からミサワホーム北海道が販売代理を受けている「サンフォレイル野幌」の全体フェアを開催することにしています。
──住宅展示場の活性化も不可欠では。アップデートやコンセプトの明確化が課題だと聞いています。
鳥山 民間2社が手がけている道内の住宅展示場では、当初は客層を明確にした運営でした。しかし、ハウスメーカーが1社、2社と抜け、その後に入るハウスメーカーのカラーによって全体のコンセプトが曖昧になってしまった。
そんな流れもあり現在、各展示会場は、特色を出せなくなってきています。これまでは協議会のようなまとまった組織がなかったので、私たちの意見が運営側にはなかなか届かなかった。これからは、協議会として展示場の新しい在り方について提案し、展示場と来場者のミスマッチを解消したい。集客力を高められるように運営側とメーカー側が一体になれるよう議論を深めたい。
──道内の戸建て住宅は減少傾向です。見通しはいかがですか。
鳥山 少子高齢化の中で市場がこれから伸びていくということはなく、二極化が鮮明になっていくでしょう。1億円超えのアッパー層とローコスト層です。ローコストを武器に相次いで北海道に進出している本州の中堅ハウスメーカーには、価格面でなかなか太刀打ちできません。私たちは品質と保証、ノウハウを前面に出した信頼度で勝負していくことが必要になってくるでしょう。
──協議会として発注や物流の一元化も目指せるのでは。
鳥山 札幌近郊でも土地価格が上昇しており、売価に反映せざるを得なくなっています。このような環境の中で、どう原価を抑えて住宅購入を促進するかを考えたい。例えば、大工さんなど施工者の側に協議会の協力組織を作ってもらい、発注単価の引き下げを工夫したい。また、各種住宅部材の物流統合も検討したい。そこまで行くには、相当の時間と打ち合わせが必要になると思いますが、少しでも原価や経費を圧縮し、社会に貢献できる適正価格の実現に向け努力したいと思います。
──今後の展開に期待します。
「北海道ハウスメーカー協議会」の正会員と賛助会員(設立総会後の記念撮影。4月21日夕、積水ハウス札幌支店)
共同イベントを計画している造成中の「サンフォレイル野幌」
「北海道ハウスメーカー協議会」の正会員と賛助会員(設立総会後の記念撮影。4月21日夕、積水ハウス札幌支店)
共同イベントを計画している造成中の「サンフォレイル野幌」
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