告発・絶望の学府㊳
加害否定、差別的言辞…

2025年07月号

遺族が起こした裁判は長く非公開で続いているが、書証などの記録は誰でも閲覧することができる(函館市の函館地方裁判所)

関与教員らの発言、生々しく
江差パワハラ・未公表聴取録


「学生を奮起させようとしたことをハラスメントにされた」――。公立看護学校で長期間にわたって続いていたパワーハラスメント問題で、当事者の元教員らが加害者としての自覚を欠いたまま現場を去っていたことがわかった。パワハラを苦に自殺した学生の遺族が起こした裁判で、それらの証言が残る記録が証拠提出されていたのだ。審理が非公開で進む中、裁判記録の閲覧を通じて確認できた事実のいくつかをここに記録しておきたい。

取材・文=小笠原 淳

第三者委聴取、証拠提出


 2023年1月20日午前、札幌市内のホテル会議室。
「じたばたしてるっていうんですか、何してるんだろうと思いました」
「なかなかちゃんと自分の役割っていうか、主張できないんだなっていうのを感じました」
「動悸を収める仕草をしている姿とか、胸に手を当てて深呼吸したりとかしているのを見て、気の弱い人なんだなと」
 声の主は、その前年まで北海道立江差高等看護学院に勤務していた女性。当時の第三者調査で学生へのパワーハラスメント関与が指摘された元副学院長、その人だ。その日、元副学院長は別の第三者委員会の聴き取り調査に応じ、電話インタビューの形で委員3人の質問に答えていた。45分間に及んだ質疑応答の概要は、のちにA4判紙12枚の聴取記録にまとめられることになる。
 調査は、2019年に自殺した男子学生(当時19)の遺族の求めで行なわれた。本誌などがこれまで報じてきた通り、この調査で教員らのハラスメントと学生の自殺との相当因果関係が認められ、学校設置者の北海道が遺族へ直接謝罪することになる。ところがその後の賠償交渉では道の態度が一変、先の因果関係を真っ向否定する主張に転じた。昨年9月に学生の母親(48)が損害賠償を求める裁判を起こしてからは、被告の道がハラスメントの存在そのものを否定するに及んでいる。

この調査報告の根拠となった関係者聴取の記録が、遺族の裁判で証拠提出されていた
(第三者調査委員会『調査書』)

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第三者調査委員会のハラスメント認定はその後、委員会設置者の北海道自身にほぼ全否定されることに
(2023年3月24日午前、札幌市内)

第三者調査委員会のハラスメント認定はその後、委員会設置者の北海道自身にほぼ全否定されることに
(2023年3月24日午前、札幌市内)

この調査報告の根拠となった関係者聴取の記録が、遺族の裁判で証拠提出されていた
(第三者調査委員会『調査書』)

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