注目の〝インテリジェントホスピタル〟カレス記念病院の浅香正博院長に訊く
新時代に向け北光記念病院と時計台記念病院を「発展統合」

2025年07月号

カレス記念病院1階のエントランスで笑顔を見せる浅香院長

(あさか・まさひろ)1948年美幌町出身。72年北海道大学医学部卒業、78年北大医学部付属病院第三内科助手。アメリカ・テキサス州ベイラー大学留学を経て94年北大医学部内科学第三講座教授。2000年北大大学院医学研究科消化器内科学教授。07年北大病院院長。11年同研究科がん予防内科学講座特任教授。16年北海道医療大学学長。24年けあ・ばんけい施設長。25年4月カレス記念病院院長に就任。日本ヘリコバクター学会理事長などを歴任。77歳

Medical Report

社会医療法人社団 カレスサッポロ(本部札幌市・大城辰美理事長)の新病院「カレス記念病院」(320床)が4月1日、札幌市東区の旧札幌卸センター跡地にオープンした。これまで同法人が運営していた北光記念病院と時計台記念病院を統合。差額ベッドがかからない全室個室とし災害時にも対応できるようにするなど、利用者目線を追求しながら最先端の医療を提供するインテリジェントホスピタルを完成させた。北大病院院長や北海道医療大学学長などを歴任し、このほど同病院の院長に就任したピロリ菌研究の権威・浅香正博医師にカレス記念病院の概要や目指す医療について訊いた。

(5月16日取材 工藤年泰・武智敦子)

令和の米騒動の真相と深層

道警不祥事
警官窃盗「訓戒」非公表

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関与教員加害否定

カレス記念病院・浅香正博院長に訊く
北光記念病院と時計台記念病院を「発展統合」

利用者の目線で「全室個室」


「カレス記念病院」は、時計台記念病院(中央区)と北光記念病院(東区)を現在地に移転統合したもので、JR札幌駅から徒歩10分と地の利が非常に優れている。
 建物は地下1階地上8階建ての鉄骨造り、一部鉄筋鉄骨コンクリート造りで延べ床面積は約5万580平方メートル。総事業費は約230億円。病床の320床は全て個室で、全ての部屋の広さは20平方メートル。差額ベッドがかからないうえ洗面台、トイレ、シャワーを完備しており壁面の43インチモニターを通して遠隔診療を受けることもできる。320床の内8床はICU(集中治療室)とCCU(冠動脈疾患集中治療室)。さらに最上階の8階には感染症に対応する18の陰圧室も備えた。
 病院として内科、外科、循環器内科、消化器内科、整形外科、眼科など24の診療科を標榜し、1階には救急センターも設けた。また看護については「スーパーセル看護」体制を構築。「セル看護」はひとりの看護師が4~5の病室を巡回する方式のことだが、同病院では看護師の他に薬剤師、リハビリテーション技師、栄養士ら専門スタッフなどが一緒になって動く「スーパーセル看護」というシステムを導入し患者のケアを行なっている。
「病床の全室を個室にした最大のメリットは患者さんのプライバシー保護で、壁面モニターによる遠隔医療は感染症対策としても有効です。ただ差額ベッドは1日に1~2万円かかるケースが多く、道内の経済環境ではなかなか手が出ない。こうした入院患者さんの負担を抑えるため、個室の差額料金を無料にしました。また看護師らコメディカル(医師以外の医療従事者)が働きやすい職場にするため各フロアにはスタッフラウンジも設けられました。大城理事長のさまざまなアイデアを生かし、患者さんと医療従事者双方にとって非常に快適な環境が整備されたと思います」(浅香院長、以下同)
 災害への備えが万全なのも新病院の強みだ。電力とガスは隣接する北海道ガスの中央エネルギーセンターから直接供給され、水は水道水のほか敷地内から汲み上げた良質な地下水を浄水装置を通して利用している。このようにカレス記念病院では電力、ガス、水道のバックアップ体制が構築されているため地震などの災害時に極めて強い。
 さらに、多目的ホール「カレスホール」には酸素設備を完備しており、災害時には250人以上の収容が可能になっている。また同病院に隣接して併設された「ダ・ヴィンチモール」には複数のクリニックが入居し、カレス記念病院のCTやMRIなどの高額機器を使うことができるなど新たな医療の在り方も模索している。
 カレスサッポロは、このダ・ヴィンチモールを運営しドラッグストアも構えるツルハと連携。災害時には店舗内の商品を病院備蓄として使用できることになっており、ライフラインのバックアップ体制を含め国内でも屈指のBCP(事業継続計画)対応病院となっている。

トイレとシャワーを完備した「全室個室」で快適な療養環境を約束

トイレとシャワーを完備した「全室個室」で快適な療養環境を約束

ハイブリッドオペ室

医師やコメディカルが自由に利用できる「スタッフラウンジ」

トイレとシャワーを完備した「全室個室」で快適な療養環境を約束

トイレとシャワーを完備した「全室個室」で快適な療養環境を約束

ハイブリッドオペ室

医師やコメディカルが自由に利用できる「スタッフラウンジ」

大きく進化する急性期医療


「カレス記念病院」には、血管内治療と外科的手術を同時に行なうことが可能な「ハイブリッドオペ室」をはじめPET-CTやMRIなど最新の医療機器が揃うほか、従来からあった手術支援ロボット「ダヴィンチXi」が秋にもう一台導入される予定。ダヴィンチXiは、最大10倍の拡大が可能な3D内視鏡を備え、手振れがない精密な切開・縫合が可能な鉗子操作をできるのが特徴。カレスサッポロは21年4月から時計台記念病院に低侵襲手術センターを開設し、ダヴィンチ手術を22年10月までに約500症例を手がけている。
「ダヴィンチが2台体制になるとさらに多くの手術ができるようになるので、患者さんにとってメリットは大きい。ロボットで手術をしても予後が良くなければ意味がありませんが、その点、当病院のダヴィンチ手術の担当医師は超一流の腕を持つ先生ばかりなので、患者さんにとっては朗報です」
 ダヴィンチによる手術ができるのは泌尿器系をはじめ消化器外科、呼吸器外科領域だが、同病院の泌尿器科にはダヴィンチ手術のエキスパートとして知られる平川和志医師が在籍。このほか肺がんなどの呼吸器外科分野で製鉄記念室蘭病院(室蘭市)から長谷龍之介医師を招聘するなど、ダヴィンチ手術の充実に向け浅香院長の期待のほどが伺える。
「長谷先生は、道内において肺がんのダヴィンチ手術を最も多く手がけている医師であり、今後は肺がんの症例が増えていくと思います。呼吸器内科の医師も着任を予定しており、呼吸器外科・内科とも充実した体制で臨んでいきます」
 カレスサッポロの基幹病院として泌尿器科と眼科の診療で定評のあった時計台記念病院、そして循環器分野で道内トップレベルの実績を持つ北光記念病院が統合されて1カ月。新病院の感触はどうか。
「2つの病院の良さが合わさったのがカレス記念病院です。時計台記念病院と北光記念病院にはそれぞれ循環器内科があり、時計台は冠動脈のカテーテル治療、北光記念は不整脈の治療で定評がありました。それがこの病院で一緒になった。病院全体としての稼働率はまだ5割程度ですが、循環器内科は8割と好調です」と手応えを感じている。
 今後については、
「院長を任された以上は社会医療法人としての責務を果たす医療機関にしていきたい。そのひとつが救急医療、そして過疎医療への取り組みです。北光記念病院で展開していた救急医療も再整備し、専門医も配置しました。過疎医療についても力を入れ、循環器の医師を地方へ派遣しています」と意欲を見せる。
 またカレス記念病院では院長直轄の「感染症対策室」と「危機管理室」が設置され、感染症の発生や医療事故などの際は、浅香院長が陣頭指揮をとって対策に当たるという。
「ここの感染症対策は万全です。全室個室なうえに空調もしっかりしている。加えてウイルスが外部に出ないよう気圧を低くする陰圧室が18床もあります。どんな感染症にも対応でき、北海道の感染症対策のモデルになると思います。発生した医療事故について全てを明らかにするための権限が私にある。責任は重大です」
 大城理事長の提案で、中国などインバウンド向けの病床を設けることも検討している。時計台記念病院と北光記念病院の病床数を合わせると370床になるが、現在のカレス記念病院は320床。「残ったベッドを活用し、旧北光記念病院の施設は慢性期の病床に転用することも検討しており、その中から8床ほどをカレス記念病院にインバウンド向けの病床として整備するのではないか」と浅香院長。

地域と世界に貢献する病院


 北大名誉教授でカレスサッポロの常務理事でもある浅香院長は1948年オホーツク管内の美幌町出身。日本におけるピロリ菌研究の第一人者で胃がん死亡者の減少に大きく貢献したことで知られる。北大医学部を経て北大医学部附属病院第三内科助手時代に文部省在外研究員としてアメリカ・テキサス州ベイラー大学医学部消化器科へ留学。帰国後は北大医学部内科学第3講座教授などを経て、84年にはサウジアラビア厚生省の招きでジエッダ市の内視鏡センターでアラビア人医師の指導に従事した。
 帰国後は北大医学部内科学第3講座教授、同大大学院医学研究科消化器内科教授を経て、2007年から2010年まで北大病院院長。16年から当別町の北海道医療大学学長を歴任した。24年4月からカレスサッポロが運営する介護老人保健施設「けあ・ばんけい」の施設長を務め、老年医療の研究と実践にも取り組んできた。4月1日付けで院長に就任したカレス記念病院では、木曜日の午前中には消化器内科の外来も担当している。
 そうした中で、同病院の将来像については次のように語る。
「これだけの規模と内容を備えたことを踏まえ、将来的には臨床研究の機能も強化していきたい。そのためにも海外の医学関係者と学術的なレベルで交流を重ねていく考えです。北海道医療大学の学長をしていた23年にモンゴル国立医科大学を訪ねました。同大学付属のモンゴル日本病院は日本の援助で生まれた医療機関ということもあり、互いの国の医療事情などについて学長と情報交換を行なったのです。先進国もさることながら、こうした途上国との交流は非常に意義があります。台湾にも知っている病院や大学があるので、ぜひ交流を進めたい。こういった国々の医療の発展に資するためにも、大城理事長に協力しながら病院の経営を盤石なものにしたい」
 時計台記念病院と北光記念病院という歴史と実績がある2つの病院が統合された「カレス記念病院」。常に利用者である患者の目線に立ちながら最先端の専門・急性期医療を提供するインテリジェントホスピタルの今後に注目したい。




社会医療法人社団 カレスサッポロ
カレス記念病院

札幌市東区北6条東3丁目1番地1
☎:011-777-1011
HP:https://caress-memorial.jp/

令和の米騒動の真相と深層

道警不祥事
警官窃盗「訓戒」非公表

江差パワハラ自殺問題
関与教員加害否定

カレス記念病院・浅香正博院長に訊く
北光記念病院と時計台記念病院を「発展統合」

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