
「湖白の抄」を象徴する1階の滝庭(鶴雅観光開発提供・以下同)
道内観光ホテル大手、鶴雅ホールディングス(本社釧路・大西雅之社長)の事業会社、鶴雅観光開発が支笏湖温泉で「しこつ湖鶴雅別荘 湖白の抄(こはくのしょう)」の建設に着手する。すでに同社は同温泉に「しこつ湖鶴雅別荘 碧の座(あおのざ)」「しこつ湖鶴雅リゾートスパ 水の謌(みずのうた)」を展開しており湖白の抄で3館目。この3月末に着工し2026年6月末に完成、オープンは7月中旬を予定している。
鶴雅HDは傘下の鶴雅観光開発、鶴雅リゾートで阿寒湖、支笏湖、洞爺湖、定山渓、サロマ湖、網走、ニセコなどに14館を展開中だ。
最高ランクの「座」シリーズ、ハイクォリティと小規模旅館の「抄」シリーズ、汎用性と多様性に富んだ「謌」シリーズに分かれ、国内外の観光客に人気を博している。
支笏湖温泉では2009年に「水の謌」(49室)、19年に「碧の座」(25室)を開業。今回の「湖白の抄」で「座」「抄」「謌」の3シリーズが揃うことになる。
「碧の座」は鉱石の碧をイメージし、縄文からアイヌ、現代へと続く北海道の民族の時を繋げる文様や意匠に趣向を凝らしたアート旅館で、「水の謌」は、支笏湖ブルーをストーリーに美と健康を盛り込んだヘルシー旅館。今回手がける「湖白の抄」は、支笏湖の湖面が白く見えることに着想を得て、白を基調に機能性と芸術性を両立させた、静謐な時を過ごせるプライベート性の高い旅館と位置付ける。
建設場所は、日本最古のユースホステル「支笏湖ユースホステル」があった場所。鶴雅グループは2017年にこの建物を取得。当初はアドベンチャーツーリズムの拠点施設を整備する予定だったが、コロナ禍によって計画を中断。その後に打ち出した「支笏湖鶴雅ビレッジ」構想の下、相互利用ができるように3館体制を構築することにしたもの。
国有地約4036平方メートルの敷地を賃借して3階建て、客室数24室、延べ床面積約3490平方メートルの建物(建築面積約1650平方メートル)を建設する。全室に開閉式の露店風呂を設置するほか、1階には滝庭を設け塀の上から水を流し、回廊を通って客室に入る設え。企画設計デザインは2004年開業の「鄙の座」(阿寒湖温泉)以降、同社の旅館を手掛けている太極舎イエローデータ事業部(東京)。
宿泊料金は1泊2食1人5万~6万円を想定し、完成後は「湖白の抄」「碧の座」「水の謌」が300メートルほどの距離で結ばれるため、3館施設の相互利用を進めて連泊需要を創出する考え。
別のトピックもある。「水の謌」1階のハンバーガーショップを改修して、今秋にはアクティビティベースとなる「SIRI(シリ)」(アイヌ語で大地の意味)も整備する。カヌーやスキューバダイビングといったアクティビティを通じて支笏湖温泉の丸駒温泉旅館などとも連携、地域の魅力を高めていく考え。
鶴雅観光開発によると、「碧の座」「水の謌」は現在、海外観光客の比率が40%を超えており、アッパーグレードになるほど海外比率が高くなる傾向。23年に札幌でアジア初開催されたアドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)以降、欧米からの旅行客も増えており、支笏湖温泉3館体制を生かしたアドベンチャートラベル市場にも積極的に挑戦する。