隠蔽される公務災害
「真実 知らせたい」

2025年03月号

難聴の被害は表面化しにくく、多くの隊員が泣き寝入りせざるを得ない状況が疑われている
(札幌中央区の陸上自衛隊札幌駐屯地)

現職自衛官が実名・顔出し提訴
射撃などで難聴、国に賠償請求


1月下旬、現職自衛官が名前と顔を隠さずに国を訴えた裁判の口頭弁論が札幌で始まった。長年にわたる射撃訓練などで難聴を発症した原告の男性は、同じような被害が表面化せず多くの同僚たちが今なお苦しんでいる実情を訴える。声なき声を代弁する目的は、到って明快。国民に真実を知らせたい――。「何もしないのは責任の不履行」との信念の下、組織の安全配慮義務違反を問う闘いが幕を開けた。

取材・文=小笠原 淳

補聴器53万円、当初は自腹


「防衛省や陸上幕僚監部は勉強不足ではないか」と、その人は言う。
「隊員の多くが法律をよく知らないのをいいことに、必要な対応を怠っているのでは」とも。
 声の主は、札幌市中央区の陸上自衛隊北部方面総監部に勤務する中村俊太郎・1等陸尉(50)。昨年7月、現職自衛官の立場で国に損害賠償を求める訴えを起こし、訓練などによる公務災害を認めさせる闘いを始めた。提訴後に顔と名前を隠さず報道陣の取材に応じたのは、「被害の実態を国民に広く知らしめるため」。裁判を通じてその補償を求めているのは、難聴の被害だ。
 職歴30年余の中村さんは長年にわたる射撃訓練などの「騒音業務」で難聴を発症し、補聴器を手離せなくなった。違和感に気づいたのは、遅くとも1997年の春。入隊時には聴覚が正常だったことが確認できているが、直後に受けた教育では号令外の動作に足蹴りをしてくる教員がおり、機関銃の射撃時に耳栓が外れてもつけ直すことができなかった。その後に参加した84ミリ無反動砲の訓練では射撃時の衝撃で耳栓が飛ばされるのが日常茶飯事だったが、爆風により下半身にもズボンが裂けるほどの衝撃波を受け、耳を気にかける余裕がなかった。のちに購入せざるを得なくなった補聴器の費用53万円は最終的に国に手当てして貰えたが、当初は自腹で賄うのが当たり前と思っていたという。

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