告発・絶望の学府㊱
「彼を二度殺すのか」

2025年03月号

事ここに及び、北海道は自殺との因果関係のみならずハラスメントそのものを否定し始めている
(第三者調査委員会『調査書』)=一部墨塗り処理は道

江差看護・学生自殺訴訟
同窓生が第三者委へ証言


当事者遺族と北海道との裁判に発展した、道立高等看護学院の在学生自殺問題。被告の道がパワハラ全否定の主張を展開する中、地元報道の独自取材で新たな情報が伝わった。亡くなった学生の同級生が第三者調査に応じ、学校による口封じの事実を証言していたという。本誌は2年あまり前、その声の主とみられる人物との接触を果たしていた。無念の記憶を抱え続けることになったその人は、当時の取材に何を語ったか――。

取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。56歳

掘り起こされた聴取記録


 本稿記者が初めてその声に耳を傾けることになったのは、2022年11月30日の夕刻。語り手はまさにその前日――同29日の午後7時からおよそ1時間にわたり、札幌市中央区の北海道本庁舎にほど近いホテルの一室で道の第三者調査委員3人の聴き取り調査に応じたばかりだった。
「ぼくからは、亡くなる前後の話とか、それまで彼が受けてきたパワハラの話とかを伝えて。委員の人からは、ぼく以外の人たちから聴いたらしいパワハラについて『こういうことありませんでしたか』とか訊かれましたね」
 声の主は、札幌市内で看護職に就く男性(27)。その調査への協力を決意したのは、母校で在学中に亡くなった同級生のハラスメント被害を証言するためだった。
 長期間に及ぶ組織的な加害行為が疑われ、のちにその一部が認定されることになった道立江差高等看護学院のパワーハラスメント問題。本誌などが折に触れ報じ続けている通り、2019年に起きた男子学生(当時22)の自殺事案では第三者調査でハラスメントと自殺との相当因果関係が認められたにもかかわらず、学校設置者の道が昨年からこの結果を否定し始め、遺族が損害賠償請求裁判を起こさざるを得なくなった。
 亡くなった学生の母親(48)が訴えを起こしたのは、悲劇から丸5年が過ぎた昨年9月。同10月に審理が始まった裁判で、道は先の因果関係どころかハラスメントそのものを否定する論を張ることになる。年末の記者会見でこれを問われた鈴木直道知事は「今後も適切に対応する」と抽象的なコメントを述べたのみで、手のひら返しについて正面からの弁明を避け続けた(前号既報)。

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