旭川 少女凍死事件の深層【4】
再調査委を批判する金子圭一元校長が当時を証言(後篇)
吹き荒れた誤報道の嵐で引き裂かれた尊厳と教育

2025年03月号

廣瀬さんが凍死体で発見された公園の事務所に置かれている献花台と本人の肖像画

時計の針は戻せないが、間違いを正すことで痛みは癒すことができる──。2021年3月23日、旭川市内の公園で凍死体で見つかった廣瀬爽彩(さあや) さん(当時中学2年生・14歳)が通っていた中学校の元校長・金子圭一氏(65)の証言を聞いて思うことのひとつだ。彼女が入学して最初の夏休みを前に起きた入水騒動、そして入院、転校までの経緯を語ってもらった先月号に続き、後篇で金子氏は「旭川少女凍死事件」に関する報道の問題について多く触れた。「誤りに満ちた一連の記事は、まるで嵐のようでした。あれで当事者たちの尊厳と教育現場が引き裂かれたことは間違いありません」(金子氏)

(本誌編集長・工藤年泰)

騙られた「加害と被害」


 昨年の11月号で既報のように、「旭川市いじめ問題再調査委員会」(尾木直樹委員長・以下再調査委)は、昨年9月に公表した報告書の「はじめに」で次のような一文を記している。
「本件は、廣瀬爽彩さんが転校後間もない時点で雑誌に記事が掲載され、その後もマスコミの関心を集め、インターネットでも様々な記事が飛び交った。中には事実と異なる記載なども多くあり、ことにインターネットでは個人名や写真を晒し、いわれなき非難を繰り返すようなものも散見される。このことは誠に遺憾であり、当委員会でも厳重に抗議したい。(原文ママ)」
 再調査委は、一連の報道が事実と異なっていたことについて「誠に遺憾で厳重に抗議したい」としたものの、どのような内容が間違っていたかについては全く触れなかった。そしてこの再調査の前に行なわれ、2022年9月に結果が公表された「旭川市いじめ防止等対策委員会」(第三者委員会)による報告書では、「第6本件重大事態に係る報道の誤り」の記述全てが黒塗りで隠された。これらのことを念頭に金子元校長の証言に耳を傾けてもらいたい。


 ──先月号は、2019年6月下旬に起きた廣瀬さんの入水騒動の後で、金子さんが校長として企画した「謝罪の会」が開催できなかったところまででした。
 金子
 開催に向け実現の目処が立った頃には2学期が始まっており、爽彩さんは市内の別の中学校に転校していました。しかし、それでも私は会を開きたかった。爽彩さん本人と親御さんが同席する中で、入水騒動に関係したうちの生徒、別の中学校の生徒、その場にいた小学校の児童たちに集まってもらい、それぞれ何がいけなかったのかを反省、自覚する教育指導の場にしたかったからです。そのうえで爽彩さんに戻ってきてもらえたらと考えていました。

色紙に書いた絵に添えられていたメモ
※写真の一部を加工しています

"旭川いじめ凍死事件"で吹き荒れた誤報道

江差パワハラ
自殺学生の友が悲痛の訴え

隠蔽される公務災害 射撃などで難聴に

道警不祥事 前年比大幅増
わいせつ、盗撮、処分

本人が見つかった現場付近。手前の縁石付近で体育座りのような姿で亡くなっていた

廣瀬さんは仲間と公園によく集まっていた(昨年11月20日、記者を案内する金子氏)

本人が見つかった現場付近。手前の縁石付近で体育座りのような姿で亡くなっていた

廣瀬さんは仲間と公園によく集まっていた(昨年11月20日、記者を案内する金子氏)

色紙に書いた絵に添えられていたメモ
※写真の一部を加工しています

"旭川いじめ凍死事件"で吹き荒れた誤報道

江差パワハラ
自殺学生の友が悲痛の訴え

隠蔽される公務災害 射撃などで難聴に

道警不祥事 前年比大幅増
わいせつ、盗撮、処分

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