Business Report
百年の大計で社会課題を解決する事業創造拠点が札幌の桑園に誕生
オープンイノベーション「エア・ウォーターの森」

2025年02月号

ガラス張りの壁面が青空に映える「エア・ウォーターの森」

開業を前にした12月5日の会見でエア・ウォーター(本社大阪)の豊田喜久夫会長・CEOが口火を切った。「カーボンニュートラルや食料危機を考えたら、北海道はそれらの課題を解決できる一番ポテンシャルが高いところ。ラピダスが進出して成長余地も大きい。そんな場所で北海道に出自がある当社は新しいエア・ウォーターを創ろうと、この施設を完成させた」。その施設こそが、このほどJR桑園駅に近くに誕生したオープンイノベーション拠点「エア・ウォーターの森」だ。同社の母体企業のひとつ、ほくさんの誕生から間もなく百年。国内外の課題を見据え次の百年の大計を生み出そうと、道内の〝産官学金〟を巻き込みながら産業界側が仕掛けるかつてない挑戦をレポートする。
 
(12月19日取材 佐久間康介・工藤年泰)

創業百年、北海道への恩返し


 マンションや大型商業施設が密集する桑園地区で、ガラス張り4階建ての建物がひときわ異彩を放つ。ここには以前、エア・ウォーター物流の本社兼倉庫があった。更地になってから10年、エア・ウォーターではさまざまな検討を経て北海道の課題解決に資する新事業の創造、開発、発信拠点としてオープンイノベーション拠点を開設することにした。
 その経緯について豊田会長が言う。
「医療モールを作ろうとか、いろんな考え方が出てきたが、最終的にはお世話になった北海道のために何かやれることはないのかという総意で今回の施設を作ることになった。北海道のエア・ウォーターグループ5千人の思いも詰まっているので、何としても目的を果たしたい」
 北海道は官主導で開発が進んできた歴史がある。開発予算はインフラ整備に重点が置かれ、土木建築業界が北海道経済をリードする時代が長く続いた。このため製造業など、ものづくり産業は都府県に比べてウエートが低く、社会課題の解決はもっぱら官や大学の主導で進められてきた。最近では、札幌市や北海道、北海道経済産業局が中心になって2023年に設立された「STARTUP HOKKAIDO」がスタートアップ企業創出のプラットフォームとなっているほか、産官連携組織「HSFC」(エイチフォース)も北海道大学が主幹機関になっている。
 だが、産業界の主導によるこうした組織の設立は、これまでほとんど行なわれてこなかった。
 エア・ウォーター北海道(本社札幌)の事業企画部インキュベーショングループの棟方祐介リーダーは、「当社の源流の1社は1929年創業の北海酸素、いわゆるものづくり企業です。間もなく創業100年を迎えるにあたり、育てていただいた北海道への恩返しの意味で、地元の課題解決支援を産業界側から進めることにしました。当社には医療、エネルギー、農業、食品などの要素技術(製品やサービスを構成する基本的な個々の技術)の広がりがあります。こうした技術を可能な限り使って、自治体や大学、企業、スタートアップなどと連携してイノベーションや新しい価値を生み出し、社会課題の解決に取り組み、当社の新事業創出にも繋げていきたい」と話す。

交流促すイノベーション空間


「エア・ウォーターの森」の前に立つと、オフィスビルとは異なるシャープで洗練された存在感に圧倒される。主要部材に北海道産カラマツを100%使用した施設で、木造建築では北海道では一番大きな建物。壁面のガラス越しには、高層階まで伸びた「X」状の木の構造材が透けて見える。建物内部は、さながら未来都市を想起させるような空間。4階まで開放感のある吹き抜け構造で、空中を斜めに横切る連絡通路や先述の「X」状の柱が建築物というよりも作品の趣を醸し出す。

「北海道が一番成長する地域」と太鼓判を押した豊田喜久夫会長・CEO(12月5日)

「X」状の木の構造材に目を奪われる内部。1階から4階までが吹き抜けになっている

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エア・ウォーターの森で取材に応じた棟方リーダー(左)と髙橋係長(12月19日)

2階には個室タイプのオフィスが集積する

広々としたコミュニティワークスペース(3階)

誰でも利用できるレストラン「EUREKA(エウレカ)」(1階)

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「X」状の木の構造材に目を奪われる内部。1階から4階までが吹き抜けになっている

エア・ウォーターの森で取材に応じた棟方リーダー(左)と髙橋係長(12月19日)

2階には個室タイプのオフィスが集積する

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