道警不祥事から考える〈74〉
道警 文書不開示で謝罪

2025年01月号

監督上の措置に終わった「異性関係不適切事案」は、悪質な性犯罪として捜査の対象となっていた
(北海道警察が一部開示した『事件指揮簿兼犯罪事件処理簿』)

前年の公開請求で対応漏れ不祥事2件、あわや藪の中


警察不祥事に関連する本稿記者の定期的な公文書開示請求をめぐって11月中旬、情報公開を扱う地元警察の担当課が前年の手続きに不備があったとして記者に謝罪した。なんらかの原因で文書の探索漏れがあり、一部の事件・事故の記録が開示されていなかったという。1年以上を経て改めて開示されたのは、警察官による強制性交事件と公用車の人身事故、計2件を記録した公文書。今回開示漏れが発覚していなければ、いずれも永久に陽の目を見なかった可能性が高い。

取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。56歳

埋もれていた「強制性交」


 北海道警察が公文書の“開示漏れ”をあきらかにしたのは、本稿記者が定期的な開示請求の一環で同本部を訪ねた10月28日のこと。対応した窓口の担当者から謝罪の申し出があり、この前年――2023年の開示請求に対して少なくとも2件の警察不祥事に関係する文書が開示されていなかった事実が明かされた。
 小欄で折に触れて報告を続けている通り、本稿記者は3カ月に一度の頻度で警察職員の不祥事(懲戒処分及び監督上の措置)の記録の開示を道警に求め続けている。定期的な請求に対応する道警はおおむね2週間の開示期限を経て『懲戒処分一覧』や『処分説明書』『訓戒書』などの文書を開示することになるが、これらの文書の提供を受けた記者は『一覧』の写しをもとに“第2弾”の請求を行なうことにしている。具体的には、先の3カ月間に記録された不祥事のうち報道発表されたものがあれば発表の記録を、同じく事件・事故として捜査の対象になったものがあればその記録を、それぞれ改めて開示するよう求めるものだ。この2段階の文書開示請求により、道警が深刻な不祥事を適切に公表しているかどうか、及び法令違反が疑われる事案を漏れなく捜査しているかどうか、各文書を突き合わせて検証することが可能となるわけだ。
 ただ先述の『一覧』などからは、どの不祥事が発表事案となり、また捜査の対象になったのかを確認することができない。そのため記者が第2弾の請求に先立ち道警へ寄せているのが、対象文書の特定依頼。依頼を受けた道警の担当課は『一覧』などを参照して文書の探索にあたり、各課に照会を重ねて開示されるべき記録を特定していく。その作業が終わった時点で初めて、どの不祥事が報道発表や事件捜査の対象となったのかがあきらかになり、以後は一般的な手続きで当該文書の開示作業が進められることになる。
 
 10月に伝わったのは、この文書特定依頼に際して複数の事案の記録が探索の対象から漏れていた経緯。懲戒処分に到らない軽微な制裁である「監督上の措置」となった2つの事案について、本来であれば23年の時点で記者に開示されていなくてはならなかった捜査の記録が開示対象文書として特定されていなかった、つまりは適切に開示されていなかったという。
 具体的に記すと、それは強制性交(当時)事件と人身事故の捜査の記録。言わずもがな、ともに加害者は現職警察官で、繰り返しになるがどちらも懲戒処分に到らず、また報道発表も免がれていた。

事件の容疑者に怪我を負わせたのは捜査員、事故車輌は「護送車」だった(道警が一部開示した『重要特異交通事故発生報告書』)

旭川 少女凍死事件
再調査を批判する元校長が当時を証言

江差・自殺訴訟で仰天主張
道「パワハラ」無かった

「高裁判決は違憲」
ヒグマ駆除めぐる裁判は最高裁へ

乳がん検診の必要性とトレンドを「さっぽろ麻生乳腺甲状腺クリニック」に訊く

強制性交事件を捜査した警察は容疑者の巡査長を送検したことがわかっているが、その後の起訴の有無は定かでない
(帯広市の釧路方面帯広警察署)

強制性交事件を捜査した警察は容疑者の巡査長を送検したことがわかっているが、その後の起訴の有無は定かでない
(帯広市の釧路方面帯広警察署)

事件の容疑者に怪我を負わせたのは捜査員、事故車輌は「護送車」だった(道警が一部開示した『重要特異交通事故発生報告書』)

旭川 少女凍死事件
再調査を批判する元校長が当時を証言

江差・自殺訴訟で仰天主張
道「パワハラ」無かった

「高裁判決は違憲」
ヒグマ駆除めぐる裁判は最高裁へ

乳がん検診の必要性とトレンドを「さっぽろ麻生乳腺甲状腺クリニック」に訊く

目次へ

© 2018 Re Studio All rights reserved.