狩人、銃を奪われる⑨
そして誰も撃てなくなった

2024年12月号

池上治男さん(中央)は狩猟歴 30年超、猟銃は取り上げられたままだが狩猟免許は維持しており、地元の有害鳥獣対策実施隊員の活動も継続している(10月18日午後、札幌高等裁判所前)

ヒグマ駆除裁判で逆転判決
全面敗訴にハンターら動揺


言い渡しの瞬間、傍聴席を重苦しい空気が覆った。「被控訴人の請求を棄却する」。自治体の要請でヒグマを駆除して銃を取り上げられたハンターが処分の撤回を求めて起こした裁判は、原告側が全面勝訴判決を得た筈だった。地元公安委員会の控訴で争いが上級審に持ち込まれた結果、改めて示された結論はハンター全面敗訴の逆転判決。駆除の現場に走った動揺は小さからず。即ち「誰も撃てなくなった」――。

取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。55歳

判決理由にハンター絶句


「判決には科学的根拠がなく、裁判所の見識を疑わざるを得ません」
 北海道猟友会砂川支部の奈井江部会長を務める山岸辰人さん(72)は憮然として言い放つ。
「駆除が処罰の対象になるなら『もうやれない』ということになる。銃も使わない、箱罠も使わない。今回の判決が確定したら、ヒグマ管理計画そのものが頓挫することになりますよ」
 語られるのは、同支部の支部長を務める池上治男さん(75)が起こした裁判の控訴審判決。10月18日午後、札幌高等裁判所(小河原寧(やすし)裁判長)で言い渡されたのは、3年前の札幌地裁(廣瀬孝裁判長)・一審判決を大きく覆す結論だった。
「主文1、原判決を取り消す。2、被控訴人の請求を棄却する」


 本誌などが繰り返し伝えてきた通り、その裁判が始まったのは2020年春のこと。前々年の8月に地元・砂川市の要請でヒグマを駆除した池上さんは2カ月後に突然、鳥獣保護法違反などの疑いで北海道警察・砂川警察署(のち滝川署に統合)の捜査を受けることに。事件は不起訴処分に終わったが、警察は池上さんから押収したライフル銃などの返還を拒み、道公安委員会に銃所持許可の取り消しを上申、これを受けた公安委があっさり取り消し処分を決めてしまう。処分を不服とした行政不服審査申し立ては奏功せず、池上さんは裁判を起こさざるを得なくなった。

池上さんと代理人・中村憲昭弁護士は、高裁判決直後から上告の意志をあきらかにしていた(10月18日午後、札幌市内)

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ヒグマ駆除裁判で逆転判決
全面敗訴にハンター動揺

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北海道猟友会の堀江篤会長は高裁判決後に初めて駆除現場へ足を運び、地形などを確認した――猟友会では同月内にも三役会を招集して今後の対応を協議する考え
(11月6日午後、砂川市宮城の沢)=道猟友会砂川支部提供

池上さんと代理人・中村憲昭弁護士は、高裁判決直後から上告の意志をあきらかにしていた(10月18日午後、札幌市内)

北海道猟友会の堀江篤会長は高裁判決後に初めて駆除現場へ足を運び、地形などを確認した――猟友会では同月内にも三役会を招集して今後の対応を協議する考え
(11月6日午後、砂川市宮城の沢)=道猟友会砂川支部提供

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