次世代半導体工場「ラピダス」と厄介な化学物質・PFASとの関係
いま、水があぶない

2024年11月号

国産先端半導体の製造工場「ラピダス」の建設現場(今年4月撮影)。
稼働にともなう〝負の側面〟の中で住民らがとりわけ不安視するのは、PFAS(有機フッ素化合物の総称)がもたらす健康被害などについて。道民に対する十分な情報提供も不十分なままだ

経済発展と環境保全の両立を目指した対策を

全国各地で今、PFAS(ピーファス)と総称される化学物質がもたらす水道水や食品などへの汚染が問題視されている。体内に取り込まれると血液に溶けやすく、排出されにくい特徴があり、脂質異常症や発癌などの健康被害をもたらすことも。千歳市に進出する次世代半導体工場「ラピダス」をめぐり、住民らの間から工場用水や製造過程で生じる排水などに含まれるPFASの影響を危惧する声を聞く。将来に禍根を残さぬために、この問題をどう考えていけばいいのか──。

(ルポライター・滝川 康治)

“負の影響”は十分に考察されずどうなる「ラピダス」の処理水?


「PFASの汚染は氷山の一角が見えただけ。行政、企業によるPFAS汚染対策を推し進めるのは生活者の声です。(略)長年産業界で重宝され、さまざまな製品、製造工程に使われてきたPFASは私たちの予想を上回る勢いで世界中に拡散し、水や土といった環境を汚染していきました。実際に、どんなPFASがどれくらいの量使われたのか、それがどこを汚染し、また新たな場所を汚染しようとしているのか、正確に分かっている人はまだ誰もいません」
 これは、最近出版された『水が危ない! 消えない化学物質「PFAS」から生命を守る方法』(河出書房新社)の中で、日本のPFAS研究の第一人者で知られる、著者の原田浩二さん(京都大学大学院医学研究科准教授)が述べた言葉だ。日本でも最近注目が高まってきたPFASだが、原田さんは「まだ、そのほんの一部しか捉えることができていない」と指摘している。
 ラピダスのような先端半導体工場では、大量の水資源や電力が消費される。半導体の製造過程では、1万種類もあるとされるPFAS(有機フッ素化合物の総称)のいくつかが使われる。千歳市に進出する同社では、すでに規制対象の3種類のPFASは使用しない(できない)が、代替物質として何が使われるのか、詳しい情報は示されていない。
 道は7月中旬、太平洋に注ぐ安平川を水源にする工業用水施設から国の飲用水の暫定目標値(PFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)の合計値・1リットルあたり50ナノグラム)を超えるPFASを検出したと発表。安平川の水はラピダスの水源に利用され、千歳市の公共下水道施設で処理した後、排水は日本海に注ぐ千歳川に放流する計画になっている。このまま進むと安平川のPFAS汚染水に加え、ラピダス由来の未規制のPFASが排出される可能性が高い。その影響は誰も想定できない。

1977年、札幌市生まれ。北海道大学工学部を卒業後、陸上自衛隊の自衛官や千歳市適正ごみ処理推進員など。2021年の千歳市議会議員選挙で初当選し、現在、同議会の総務文教常任委員会、議会運営委員会の委員。PFAS調査を重ね、ラピダス進出の問題点などを追及してきた

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千歳や苫小牧、札幌などの市民有志は「ラピダス」の稼働を念頭に、千歳川などで独自に水質調査を始めた(8月19日)

今年3月に千歳市が作成した半導体情報ウェブサイトの表紙。〝負の側面〟は紹介されないという

昨年秋から月1回のペースで続いている自由学校「遊」の半導体講座

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