首相批判封殺の波紋㉚
謝罪、処分、検証は…

2024年11月号

違法行為の認定後も、責任者である道知事・警察本部長・公安委員長のいずれも謝罪の意思を示していない
(9月9日午後、札幌市中央区の北海道警察本部前)

「排除は違法」で問われる責任
野次国賠敗訴の道が要請黙殺


8月中旬に判決が確定した、首相演説野次排除事件国家賠償請求裁判。排除被害者への損害賠償を命じられた北海道はその後、謝罪や関係者の処分、問題の検証などを求められることとなったが、現時点でいずれにも明答を返していない。一審被告として控訴・上告にまで踏み切った筈の自治体は、5年間続いた争いに突如関心を失ってしまったのか。「慰藉料払って終わり、では済まされない」――。疑問の声が上がり始めるまでに、さほどの時間は要しなかった。

取材・文=小笠原 淳

顕わになった「司法軽視」


「5年間にわたる裁判で『違憲』『違法』という判決になったのに、それを受けて処分とか再発防止策とか何もしないんだったら、本当に司法が軽視されていることになる」
 そう指摘するのは、地元警察を訴えた裁判で全面勝訴判決を勝ち取った札幌市の桃井希生(きお)さん(29)。2019年7月、選挙演説中の安倍晋三総理大臣(当時)に「増税反対」などと野次を飛ばして演説の場から排除され、警察官に長時間つきまとわれる被害に遭った。本誌前号など既報の通り、同じく「安倍やめろ」と叫んで排除された同市の大杉雅栄さん(36)とともに起こした国家賠償請求訴訟では本年8月、警察が桃井さんの表現の自由などを違法に侵害したとする判決が確定したところだ。
 全国的に耳目を集めた裁判の元原告が改めて声を上げることになったのは、相手方の判決後の対応、否、非対応に疑義を覚えたためだ。本誌前号締め切り直後の9月9日午後、桃井さんと代理人らは実質敗訴した北海道の3機関(知事部局、警察本部、及び公安委員会)に要請書を提出し、排除被害への謝罪や当時の警察対応の検証などを求めた。
「『裁判に敗けました。慰藉料払いました。はい終わり』で済むわけないと思います。二度とこんなことが起こらないようにちゃんと検証すべきですし、排除に関わった警察官、その時の責任者の本部長も含めて、処分をすべきです」

北海道公安委員会は具体的な要請に応えず「警察に調査を指示」したのみ
(9月12日付『連絡書』)

鈴木知事

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