告発・絶望の学府㉝
パワハラ死問題 法廷へ

2024年11月号

当時の学院トップは、自殺の原因がパワハラにあるとして個人的に遺族へ謝罪していた(2021年11月に遺族が受信したショートメールの一部)
※ 画像の一部加工は本誌

江差看護・最悪の被害で国賠提訴
遺族「道に裁判を強制された思い」


「ここで諦めては息子が報われない」と、その母親は訴える。3年前の春に北海道立江差高等看護学院で表面化した、教員による日常的なパワーハラスメント問題。一連の事案の中でも最悪の被害といえる在学生の自殺問題が、紆余曲折の挙句に法廷へ持ち込まれることとなった。第三者調査を受けて謝罪した道のその後の「手のひら返し」は、遺族にとっては提訴を促す挑発に等しかったという。即ち「道が裁判を望んだ」――。

取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。55歳

提訴、追い込まれた末に


「ご遺族は何度も道に裏切られた」と、植松直(すなお)弁護士(函館弁護士会)は語気を強める。9月18日午後、函館市内で開いた記者会見での一齣だ。
 5年前の9月に北海道立江差高等看護学院で起きた、在学生自殺事件。のちのハラスメント告発とそれを受けた調査で被害は関係者の知るところとなったが、看護学院を所管する道の担当課による謝罪は昨年春まで待たなければならなかった。加えて、それ以降の交渉では一度認められた筈の事実が否定され、賠償をめぐる示談が振り出しに戻る結果に。謝罪から1年半を経た本年9月、被害者遺族は訴訟を決意せざるを得なくなる。代理人の植松弁護士に言わせると、「遺族にとっては『道に裁判を強制された』思い」だ。
「ご遺族には、提訴する意志はまったくなかった。むしろ早く終わらせたかったんですが、道が自殺とパワハラとの相当因果関係を認めないのは『提訴しろ』と言われているようなものだと受け止め、せざるを得なくなったと。…これまでの心労と、提訴によって今後も続くであろう心労を考えると、本当にキツいだろうなと思います」
 道に9500万円の損害賠償を求める訴えを起こしたのは、亡くなった男子学生(当時22)の母親(48)。函館地方裁判所に訴状を提出した9月18日は、亡き長男の5度めの命日にあたる。提訴後の会見に同席できなかったその人は、植松弁護士に次のようなコメントを託していた。

道の「手のひら返し」について、「いろいろ推測はできるが、理解はできない」と植松直(すなお)弁護士(9月18日午後、函館市内)

中和興産
幕が開いた「杉澤劇場」

ヒグマ駆除裁判で逆転判決
全面敗訴にハンター動揺

自殺学生遺族陳述
江差パワハラ裁判で初弁論

自公大敗は本当に「政治とカネ」だけだったのか!?

道が態度を一変させた直後、学生の母親は「謝罪を受けるべきではなかった」と悔やむことに(昨年11月下旬、後志管内)

道の「手のひら返し」について、「いろいろ推測はできるが、理解はできない」と植松直(すなお)弁護士(9月18日午後、函館市内)

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