2年前の取材では疑惑を全面的に否定していた札幌トロイカ病院
昨年、開院40周年を迎えた精神科専門病院、社会医療法人共栄会 札幌トロイカ病院(札幌市白石区・有田矩明理事長)で長年にわたり診療報酬の不正請求が続けられてきた疑いが浮上した。複数の関係者が「デイ・ナイトケアの実施時間が算定基準を満たしていないにもかかわらず、時間を偽り請求している」と証言し、入手した関係書類からも不正が日常的に行なわれていることが強く疑われる。419病床という精神科領域における道内有数規模の同病院で、いったい何が起きているのか──。
(工藤年泰)
精神科病院で一定の治療を終えた患者の社会生活機能の回復を目指して行なわれているのが「デイケア」で、これにはショートケア(午前中の3時間)、デイケア(午前中から夕方までの6時間)、デイ・ナイトケア(午前中から夜8時前後までの10時間)の3種類がある。
これらの診療報酬は比較的手厚く、特に10時間のデイ・ナイトケアは1000点として算定され、ひとり当たり1万円を請求できる。時間内に食事を提供すれば1食当たり約50点も加算される。
このデイケアの件で、2年前の2022年8月に職員から次のような内部告発があったのが、札幌市白石区川下に拠点を置く社会医療法人共栄会 札幌トロイカ病院だった。
「私たちの病院では、リハビリのために入院患者さんをはじめ敷地内のグループホーム、近隣の援護寮などからデイケア、デイ・ナイトケア合わせて毎日70人程度が参加しています。このうちデイ・ナイトケアとして算定してレセプト(診療報酬請求明細書)をあげているのは50人ほどですが、実際には夕方5時半に提供される夕食を食べたら、みんな帰っています。夜8時までとされる算定条件を全く満たしていません」
関係者によれば、このような実態とかけ離れた請求は、少なくとも2007年(平成19年)頃から始まり、以後17年間にわたり是正されることなく続けられてきたという。
2年前の内部告発の際には、法人本部の葛西典男事務局長(当時)と千葉一也課長に取材し、事実関係を確認するよう求めたが、返ってきたのは「そのような不正は一切行なわれていない」という完全否定だった。