木造建て売り住宅の第1弾となる札幌市西区西野5条3丁目の物件
大和ハウス工業(本社大阪)は、北海道の戸建て住宅、低層集合住宅を従来の鉄骨プレハブ工法から木造在来工法に全面的に切り替える。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス=ゼッチ)水準の省エネ住宅が新築基準になる予定の2030年に向けて対応するのが目的で、住宅価格の低減にも繋げ1次取得層に購入促進をアピールする。第1弾として今年9月中旬以降、札幌市西区西野で木造建て売り住宅の販売を始め、低層集合住宅の木造化もラピダスに沸く千歳市などで進めていく考えだ。
(佐久間康介)
鉄骨プレハブ住宅の先駆的なハウスメーカーである大和ハウス工業は、2023年度に全国で約5200棟の戸建て住宅を販売しており、その約9割が鉄骨プレハブ住宅。
戸建て住宅は高断熱、高気密でエネルギー消費量を抑えたZEH水準の住宅が2030年には新築標準になる予定。本州では、こうしたZEH水準に対応することは鉄骨プレハブ住宅でも可能だが、積雪寒冷地の北海道では、より高い断熱性能が要求され、型式認証を取得した鉄骨プレハブでは対応が難しい。鉄骨(鉄)を製造する際に多用する化石燃料は、カーボンニュートラルの流れにも逆行しかねない。
このため地域の実状に応じた事業戦略が必要ということで、同社では北海道の戸建て住宅、低層集合住宅の全面木造化に踏み切った。
これまでは、全国にある自社工場で生産した鉄骨部材を北海道に運んで現地で組み立てていたが、これからは輸入集成材を道内の協力工場でプレカット、現地で組み立てる方式に切り替える。
価格は、鉄骨プレハブでは土地代を含めた3LDKタイプで5500万円~6000万円で、他の大手ハウスメーカーと同等だが、木造化によって4500万円程度に抑えることができるようになる。
ある住宅関係者は、「立地条件で価格は変わるが、標準で4500万円台なら夫婦共働きで年収800万円の1次取得層でも手が届く範囲。5000万円を超えると、両親の援助や元々資産がある人などに限られてしまう。大和ハウス工業は住宅メーカーとしてネームバリューがあるが、イメージ的に『高い』と思われる場合が多く、最初から(住宅取得希望者の)選択肢に、なかなか入らなかった。この価格なら十分に選択肢に入るのではないか」と話す。
それでもまだ地場のハウスビルダーより割高なのは事実。この点について大和ハウス工業の池本謙一北海道支店住宅営業所所長は、
「当社は、マンションやホテル、集合住宅、戸建て住宅を全国展開しているため住宅設備機器の調達力が強いのが持ち味。地域のハウスビルダーよりも競争優位に調達した住設機器を利用し、抑えたコストを構造面や保証面に振り向けています」と話し、長期優良住宅認定や品質保証が同社の特徴だと強調。「行政官庁による長期優良住宅認定は全国平均が28%程度で、札幌市全体でも40%を切っていますが、当社の戸建て住宅は100%認定を受けており、メンテナンスをすれば75年以上持ちます」と池本所長は話す。