Business Report
ゼロからナマコを育て放流 豊浦町で始まった種苗生産

2024年08月号

開所式の記念撮影でこれからの飛躍を誓う関係者
(6月18日、右端が羽澤理事長)

東京の不動産会社が豊かな海づくりに挑戦

胆振管内豊浦町にナマコの陸上種苗生産を行なう北海道海洋生物研究センターの試験棟が竣工し、6月18日に開所式が開かれた。今回の試験棟では12槽の水槽を稼働して年間1200万尾の稚ナマコ供給を計画。今後同センターでは段階的に施設規模を拡張し、6年後の2030年には240槽の水槽で年間2億4000万尾の供給を目指す。運営するのは東京・銀座(中央区)を拠点に不動産業などを展開する老舗企業、彌生(やよい)グループの関連会社。花の銀座の事業者が、北の〝海のまち〟で地域資源創出に乗り出したチャレンジをレポートする。

北海道漁業の新たな可能性


 今回の北海道海洋生物研究センターを運営するのは株式会社三鷹吉祥(本社東京)。創業明治24年という老舗の銀座の不動産業「彌生(やよい)グループ」が、一次産業への進出を目的に設立した子会社だ。数多ある一次産品の中で、ナマコに注目したのは何故なのか。それはこの生物が海洋環境の改善、保全に寄与していることが大きかったようだ。
「ナマコは、畑の土壌を改良するミミズと同じように、海の環境を良くしてくれる存在」と強調するのは、三鷹吉祥社長で同センター理事長でもある羽澤学氏。
「海外の事例では、乱獲によりナマコが消えた海域において魚の水揚げが減少傾向を辿っています。この種苗を生産し放流していくことは、海洋環境の改善にも直結していきます」(羽澤理事長)
 また同センターのアドバイザーを務める公立はこだて未来大学 マリンIT・ラボ所長の和田雅昭教授は、
「地球温暖化に起因する海洋環境の変化などによって、一部の魚種や地域では天然資源の自立的な再生産だけでは加入量が不足するようになっており、産業としての水産業の持続性が危ぶまれています。ナマコはその代表格であり、北海道だけでなく全国の漁村で人工種苗の安定確保が喫緊の課題となっています」とし、
「サケの種苗生産・種苗放流の技術が確立したことで、北海道や東北における秋サケ漁では、加工流通を含めた産業としての水産業の持続性が実現しました。同様に、ナマコの種苗生産・放流の技術を確立することによって、持続可能な漁が実現するものと考えています」と、今回のオープンに期待を寄せる。
 同センターでは、卵からおよそ30ミリの稚ナマコまで育成。それらを漁協に販売し、噴火湾などに放流。その後、2年半くらいで水揚げできる大きさに育つという。はじめは年間1200万尾、将来的には2億4000万尾を供給して海に放流。一連の事業は全て自己資金で賄う方針で、稚ナマコは育ちながら豊かな海洋環境づくりに寄与し、成長した多くのナマコは水揚げとなって地域経済にも貢献する。
「漁業の現場では高齢化が進んでいる。若い人たちに次の担い手になってもらうためには、どうしても最低限の稼ぎがないと厳しい。この事業が後継者問題の解決にもつながればと思っています」(羽澤理事長)

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北海道海洋生物研究センターの試験棟
(右側の敷地が増設予定エリア)
虻田郡豊浦町字大岸199-4

関係者と開所を祝う羽澤理事長(中央)

試験棟内部の水槽

北海道海洋生物研究センターの試験棟
(右側の敷地が増設予定エリア)
虻田郡豊浦町字大岸199-4

関係者と開所を祝う羽澤理事長(中央)

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