地域発「企業づくり」の最前線──釧路市ビジネスサポートセンター
どの企業にもあるウリを伸ばし地元経済の「稼ぐ力」をサポート

2024年08月号

「どんな会社にも必ずウリがある」と話す澄川センター長(5月29日、釧路市内のk - Biz事務所)

(すみがわ・せいじ)1979年島根県美濃郡美都町(現益田市)出身。島根県立益田高校を経て東京大学工学部機械工学科卒業。2004年リクルート入社。住宅情報の事業部で業界最大手から中小企業までを担当し、さまざまな手法で課題解決を提案。首都圏、関西圏、広島、福岡のクライアントのコンサルでソリューションを生み出す。18年釧路市ビジネスサポートセンターk-Biz初代センター長に就任。23年k-Hack 代表取締役に就任。3児の父。趣味はサッカー、アイスホッケー。45歳

人口減の中で柔軟かつ力強い産業構造を

人口減少が進む中で、地域の経済をいかに維持、発展させていくかは地方共通の大きな課題。その中で6年前に釧路市が設立した「釧路市ビジネスサポートセンター」(k - Biz)は、市内の中小企業経営者や個人事業主を対象にして売上増に向けたオーダーメイドのサポートを実践している。センター長を務める島根県生まれの澄川誠治氏(45)は、設立に当たり公募で採用されたいわば〝よそ者〟だ。しかし、この〝よそ者〟は、ただものではなかった。外部の目線とリクルート社での経験を活かして相談会社の現状を直視。「一歩踏み出す」アドバイスでそれぞれの背中を押し、釧路の活力向上に大きな役割を果たしつつある。その澄川センター長に、じっくり向き合った。

(5月29日取材 佐久間康介・工藤年泰)

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山陰の山間で育まれた感性
地方に関心を抱く原動力に


 丸みを帯びた体型におっとりとした物腰、テーブルを挟んで座った澄川氏に派手さはなかった。口調に勢いもそれほど感じられず、この人が百人を超える応募の中からなぜセンター長に選ばれたのか、正直不思議に思った。
 しかし、取材が進むにつれて印象は変わった。抑揚の少ない口調から淀みなく出てくるフレーズがすっと頭に入り込んでいく。そして何より、やりとりを重ねる内に胸の内に希望の火がともり始める感覚になった。
「自分にもできるかもしれない」──挑戦のハードルを下げ、自走を促す言葉の効用を誰よりも良く知っている人だと感じた。
 澄川氏は、山陰地方の山間部である島根県美濃郡美都町(現在は益田市と合併)に生まれた。地元の益田高校を卒業し、東京大学工学部機械工学科に入学。工学系を選んだのは、テレビ番組「NHK大学ロボコン」のファンで「工学系が面白そうだったから」。実父は職業訓練学校卒業後に中国電力に入社し、技術畑で活躍した人物。そんな父親を身近に見ていたことも工学系に進学する動機になった。
 しかし、卒業後に選んだ就職先は工学系とは畑違いの株式会社リクルート(本社東京)だった。
「18歳まで田舎で育ったせいか、漠然と地方に興味があった。リクルートを選んだのは地域活性事業部という組織があったから。ところがその事業部は入社前日に廃止に(笑)。それで、より地域に近いところで仕事ができる住宅情報の事業部に入った」(澄川氏、以下同)。
 住宅情報誌には、広告を出稿するクライアントがいる。東京、大阪、広島、福岡と転勤を重ね、それぞれの地域で大手から中小の住宅会社と接していく中で、それらの企業に経営にアドバイスをする機会が徐々に増えていった。フェイス・トゥ・フェイスで経営者のリアルな悩みを聞き、一緒になって解決策を探ることにいつか働き甲斐を感じるようになった。
 蓄積した経営支援のスキルを地方で直接生かしてみたい──。入社して15年ほど経ってそんな気持ちが高まってきた頃、釧路市が「k - Biz」のセンター長を公募していることを知り、迷うことなく応募。110人の中から見事に選ばれた。

k - Bizが入居する北大通4丁目ビル(釧路市内)

澄川氏が代表取締役を務める「k - Hack」では多くのエンジニアが働いている

澄川氏が代表取締役を務める「k - Hack」では多くのエンジニアが働いている

事務所の壁には釧路出身の漫画家、板垣恵介さんの色紙を飾っている

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澄川氏が代表取締役を務める「k - Hack」では多くのエンジニアが働いている

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