告発・陸の蟹工船〈6〉
「もう悪いことしないで」

2024年08月号

男性は中学卒業後、別の職場での勤務を経て今世紀初めごろに恵庭の牧場へ身を寄せたという
(6月21日午後、札幌市内)

恵庭・虐待被害者が語った思い
市「腐った野菜」など実態把握か


昨年6月に伝わった、恵庭市の牧場での障碍者虐待疑い。長期間の「奴隷労働」や年金詐取の被害を訴え、牧場関係者などに損害賠償を求める裁判を起こした当事者が6月下旬、提訴後初めて本誌などの取材に応じ、その胸中を語った。直近の口頭弁論に足を運び、傍聴席から被告らの姿を眼にした時の思いは「もう悪いことして欲しくない」。長く続いたプレハブ生活を振り返っては「自由が欲しかった」という。

取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。55歳

年金引き出し「腹立った」


 早朝4時から夜7時までの重労働が、20年あまりにわたって続いたという。報酬は、たまに貰える2000円程度の駄賃。満足な食事は得られず、上下水道の不充分なプレハブ小屋での寝起きを強いられた。支給される筈だった年金は、断りなく引き出されていたという。
「びっくりした。年金なかったら、暮らすことできない。早く返して欲しい」
 声の主は、恵庭市郊外の牧場で一昨年まで住み込みで働いていた60歳代の男性。本誌昨年10月号から報告を続けている虐待疑い事件の被害者の1人だ。
 知的障碍のあるその男性は昨年8月、長期間の不当な労働と年金詐取への賠償を求め、同じ被害に遭った仲間2人とともに牧場関係者と恵庭市とを相手どる訴えを起こした。裁判の原告として公の場に顔を出すことはこれまでなかったが、提訴後4度めになる口頭弁論があった6月下旬、初めて本稿記者などの取材に応じて被害当時の状況や裁判への思いなどを語った。被告側は虐待の事実を否定し、請求の棄却を求めているが、当事者の被害証言は具体性に富み一定の説得力がある。語られたのは、たとえばこんな記憶だ。

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(6月21日午後、札幌市内)

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