海を越えた内部告発
「第三者」は本誌記者

2024年07月号

鹿児島の元幹部警察官からの告発が北海道の記者に託された理由は、現時点で確認できていない

鹿児島県警・不祥事隠蔽疑い
物証なき「漏洩」逮捕で口封じ


本号締め切り間際に大きく報じられ始め、にわかに各地の耳目を集めることとなった九州・鹿児島県警察の不祥事隠蔽疑惑。守秘義務違反の疑いで5月末に逮捕された元警察官は、その2カ月ほど前に組織的不正の実態を文書にまとめて報道関係者に告発していた。情報を受け取ったのは、当地から海を隔てて1600キロメートルほど離れた札幌市に住むライター、即ち本稿記者・小笠原淳(55)。公益通報を託された当事者として、ここに一連のいきさつを報告する。

取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。55歳

「返還していただきたい」
逮捕後の証拠品提出要請


 6月4日午前。
 スマートフォンの記録に残る着信時刻は「10:21」、通話時間は「9分」となっている。
「うちの元生活安全部長が逮捕された件で、たいへん恐縮なんですけれども、この国家公務員法違反事件の証拠品が小笠原さんに送付されていることがわかりまして…」
 声の主は、鹿児島県警察・組織犯罪対策課の捜査員を名乗る男性。引き合いに出された「事件」は、その4日前に大きく報道されたところだった(伏字は本誌)。
《鹿児島県警は31日、職務上知り得た秘密を退職後に漏らしたとして、国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで、前県警本部生活安全部長の職業不詳■■■■容疑者(60)=鹿児島市■■=を逮捕した》
  (5月31日『西日本新聞』)
 記事によれば容疑者の男性は3月下旬、在職中に入手した鹿児島県警の捜査情報を第三者に郵送し、守秘義務違反に問われているという。先の電話の県警捜査員によると、この「第三者」はほかならぬ本稿記者で、郵送された情報は事件の「証拠品」であるらしい。やり取りは、左のように続いた。

「重要な証拠品ということで、返還していただきたいと思いまして」
 ――返還? どういうことですか。
「簡単に言いますと、証拠品として押収させていただきたいと」
 ――押収? 令状か何か出てるんですか。
「今のところは、ないです」
 ――ああ、任意ってことですね。
「はい、お願いベースになります」
 ――携帯に電話してきてるってことは、私の職業とか知ってますよね。
「そうですね、はい」
 ――誰からどういう情報を貰ったとか、どういう手紙が来たとかって普通、外部には言わない仕事なんですけど。
「…ああ」
 ――それやっちゃったら、この仕事できなくなるんで。
「ああ、なるほどですね」

 捜査員氏曰く、県警は問題の「証拠品」が本稿記者のもとに届いている事実をすでに把握できていると。それを耳にした記者はごく素朴な疑問を口に載せ、結果として自身がくだんの「第三者」であることを事実上認めてしまう形となった。展開されたのは、こんな問答だ。

告発事実の概要は、元幹部の勾留理由開示法廷の翌日からウェブニュースで配信中
(https://news-hunter.org/)

投書には差出人名の記載がなく、仮に本稿記者が受け取りを拒否していたら廃棄処分となった可能性が高い

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公益通報を担った〝容疑者〟は、物証なしで逮捕・勾留されていた(鹿児島市の鹿児島県警察本部)=ニュース HUNTER 提供

公益通報を担った〝容疑者〟は、物証なしで逮捕・勾留されていた(鹿児島市の鹿児島県警察本部)=ニュース HUNTER 提供

告発事実の概要は、元幹部の勾留理由開示法廷の翌日からウェブニュースで配信中
(https://news-hunter.org/)

投書には差出人名の記載がなく、仮に本稿記者が受け取りを拒否していたら廃棄処分となった可能性が高い

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