保育事業の中和興産に浮上した不正受給疑惑を追う②
「全保育所休園」の衝撃

2024年07月号

札幌市から事業停止命令を受けた「ちゅうわ南保育園」
(札幌市南区)

職員一斉退職を惹き起こした歪んだガバナンスと親子関係

ドミノ倒しとはこのことだろう。本誌6月号(5月15日発売)の報道以後、同24日の札幌市による「ちゅうわ南保育園」(南区)への事業停止命令を皮切りに、中和興産株式会社(本社札幌)が運営する市内5カ所の保育所が次々に事業をストップ。6月初旬には全てが休園するという前代未聞の事態が発生した。全施設休園を招いた職員の一斉退職の原因、そして、かねてから同社が抱えていた歪んだガバナンスの問題とはいったい何なのか。実は昨秋、破綻の前触れというべき事件が同社の内部で起きていた──。

(本誌編集長・工藤年泰)

突然行き場を失った園児ら
札幌市「聞いたことがない」


 既報のように中和興産(杉澤廣子社長)では、企業主導型保育園への助成金や認可保育所への補助金が過払いだったとして、国と市から合わせて約7千万円の返還を命じられ、元職員らが「園児や保育士の数が大幅に水増しされていた」と告発の動きを強めていた。これらに伴い実質的な経営者が公金の多くを“夜の街”で費消していた疑いも浮上。世間の耳目を集めていた最中に事態が大きく動いたかっこうだ。
 リードで述べた「ちゅうわ南保育園」への事業停止命令は、必要な数の保育士がいないにもかかわらず子どもを預かっていたことを受けた児童福祉法に基づく措置だが、他の4カ所は保育士を中心とする職員の一斉退職が原因。5月下旬に予定されていた給料が払われなかったことが引き金になった。
 6月3日までに休園した4カ所の保育所は次の通りだ。
 ちゅうわ南郷保育園(白石区)
 ふしみの森めぐみ保育園(中央区)
 ちゅうわ清田保育園(清田区)
 ちゅうわ発寒保育園(西区)

 国の企業主導型保育園である「ふしみの森めぐみ保育園」以外は、札幌市の認可保育所とされており、5月末時点でこれらの4園に園児計81人が在籍していたという。これだけの子どもたちがいっせいに居場所を失い、保護者らは急遽、預け先を探さねばならないことになった。
 異変は5月30日木曜朝から始まった。ある保護者はこの日、子どもを預けにいったところ保育士から「申し訳ありませんが、6月1日から休園となります」と一方的に告げられたと話す。子ども未来局が初めて事態を把握したのは、親たちが所管の区役所に相談を寄せ、区の担当課から連絡を受けてのことだった。

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国から約4700万円の返還を求められている
「ふしみの森めぐみ保育園」(中央区)

廣子氏と正通氏の自宅を兼ねた中和興産本社(中央区)

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