札幌市内は再開発が目白押し
北海道に特化した私募不動産投資信託の「北海道リート投資法人」(本社札幌)が今年2月から運用を開始した。同法人が資産運用を委託している北海道アセットマネジメント(同)を通じて札幌市内の商業施設や賃貸マンションなどを取得。北海道リート投資法人がそれらの不動産を証券化して道内外の機関投資家に販売し、配当利回り4%以上を目指す。国内初の協同型リートの可能性とは──。
(佐久間康介)
「もう一足早く北海道リートが運用を開始していたら、IKEUCHI GATEの売却はなかったかもしれない」と嘆くのは、札幌市内の不動産関係者。IKEUCHI GATEとは、札幌市の南1条通に一昨年オープンした商業ビル。地元の丸ヨ池内が建設し、世界的な建築家・伊東豊雄氏が設計を担当。鳴り物入りでオープンした。しかしコロナ禍での門出で売り上げを確保できず、土地建物を本州企業へ売却、丸ヨ池内は運営のみを行なう体制になった。
このように地元北海道の事業者が自らの資産を手放さざるを得なくなるケースは、再開発事業でも多発している。4丁目プラザビルやPIVOTも元々は地元の地権者が土地建物を所有していたが、再開発には多額の資金が必要なことから本州大手に土地建物を売却。現在、本州企業が主導して再開発を進めている。
だが不動産投資信託(REIT)の仕組みを利用すれば、道内企業が保有する資産を有効活用できる。本州企業に売却することなく、地場資本でまちづくり投資や新規事業等投資に振り向けられる──こうした考えをもとに構築されたスキームが北海道リート投資法人だ。
リートは、投資家から集めた資金や金融機関からの借り入れでオフィス、賃貸マンション、ホテル、老健施設などの不動産を取得し、賃料や売却益を投資家に分配する仕組み。不動産を保有する投資法人、その投資法人と委託契約を結び運用を担う資産運用会社で構成される。
リートは、Jリートの上場不動産投資信託と非上場の私募リートがあり、Jリートは個人も証券を買えるが、私募リートでは機関投資家に限定される。このため資産ポートフォリオなどの開示も同様に限定され、運用資産の規模などを広く開示する必要はない。Jリートに比べて株式市場の変動による影響が少なく、長期的な投資や安定的な資産運用に適していると言われている。