告発・絶望の学府㉜
道 自殺に「お詫び」せず

2024年06月号

謝罪半年後の道の豹変にショックを受けていた遺族は、さらに半年を経て伝わった事実に追い討ちをかけられる結果に
(昨年11月下旬、亡くなった学生の実家)

江差パワハラ死、謝罪1年
遺族代理人「騙された思い」


北海道立高等看護学院のパワーハラスメント問題で、当時の教員らに追い込まれて命を絶った学生の遺族が激しい後悔の念に苛まれることになりそうだ。ハラスメントと自殺との“相当因果関係”を認めた第三者調査に反し、学院設置者の道が同調査報告の重要な結論を事実上黙殺、昨年5月の遺族への謝罪は自殺の責任を詫びたものではなかったとの認識を明文化したのだ。当事者ならずとも徒労感を覚える、不可解な対応。この1年は、何だったのか――。


取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。55歳

第三者調査否定、明文化


《引き続き、誠意をもって対応して参りたい》
 本誌前号の誌面に採録した鈴木直道・北海道知事の発言だ。もとよりこれを額面通りに受け取ることができなかった当事者は、のちに伝わった報らせに天を仰ぐことになる。
「完全に騙された思いです。結局あの謝罪は何だったのか…」
 声の主は、道立高等看護学院のパワーハラスメント問題に被害者代理人として対応している植松直(すなお)弁護士(函館弁護士会)。一連の被害事案の中でも最悪のケースといえる江差看護学院の在学生自殺問題をめぐる賠償交渉で、相手方から改めて届いた文書にほとんど絶句することとなったのだ。ちょうど1年前に遺族へ直接謝罪した筈の北海道は、植松弁護士の要請に応えて本年4月26日付で発した文書を通じ、当時の謝罪が自殺への責任を詫びたものではなかったとの認識をあきらかにした。
 第三者調査で認定された筈のハラスメントと自殺との「相当因果関係」が、調査報告から1年あまりを経て“正式に”覆されたことになる。

謝罪半年、道の変わり身


 本誌などが3年前から報告してきた一連のハラスメント問題では、江差の在学生らの匿名告発を経て2021年の春以降に被害申告があった事案の多くで被害事実が認められ、そのほとんどに対して今日までに道からの慰藉などが実現している。19年9月に起きた男子学生(当時22)の自殺事案でも昨年3月までに第三者調査の結果がまとまり、先述の「因果関係」が認定されるに到った。これを受けて同5月に道の担当者が遺族に直接頭を下げることになった経緯は、同時期以降の本誌面で繰り返し伝えてきたところだ。
 謝意を表明した筈の道が一転、あからさまな“手のひら返し”を見せたのは、第三者報告から半年以上が過ぎた昨年10月下旬。調査結果に基づく遺族の賠償請求に対し、道側の代理人が「自殺の予見可能性はなかった」などの認識を示し始めたのだ。先の植松弁護士が改めて第三者調査をふまえた対応を求めても道の姿勢に変化はみられず、仮に賠償の金額を大幅に下げたとしても自殺の結果責任を前提とした賠償には応じられないとの考えが伝えられた。

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