保育事業の中和興産に浮上した不正受給疑惑を追う
“夜の街”に溶けた公金

2024年06月号

中和興産本社に近い場所にある「ふしみの森めぐみ保育園」(札幌市中央区)

国と札幌市が7千万円返還命令
園児と保育士の数を虚偽申請か


一部の道内放送局が事業者の名称を伏せて4月上旬から報じている保育園疑惑の全貌が明らかになってきた。企業主導型保育園への助成金や認可保育園への補助金が過払いだったとして、札幌市内で保育園事業を展開している中和興産株式会社(本社札幌)が国と市合わせて約7千万円の返還を命じられ、元職員らが「園児や保育士の数が大幅に水増しされていた」と告発の動きを強めている。公金の多くが“夜の街”に消えた疑いもあり、事件は巨額不正受給疑惑の様相を呈しつつある。大切な子どもを預ける現場でいったい何が起きていたのか──。

(本誌編集長・工藤年泰)


育成協会と札幌市がこれまで繰り返してきた「調査と指導」


 2018年に設立され、翌19年から保育事業を開始した中和興産株式会社(本社・札幌市中央区)。同年4月の「ちゅうわ南郷保育園」(白石区)を皮切りに、同年夏には国の企業主導型保育園「ふしみの森めぐみ保育園」(中央区)をオープン。以後3カ所(ちゅうわ発寒保育園・西区、ちゅうわ清田保育園・清田区、ちゅうわ南保育園・南区)を加え、現在では札幌市内で5カ所の保育園を運営している。「ふしみの森~」以外は札幌市の認可保育園という位置付けだ。
 同社の代表取締役は登記上、杉澤廣子氏(78)だが、設立当時から実質的に経営に当たってきたのは廣子氏の三男で専務理事を名乗っていた杉澤正通(まさみち)氏(42)とされる。廣子氏は、ガソリン販売道内大手で知られる中和石油の社長だった杉澤達史氏(2015年逝去)の未亡人だが、会社として中和石油との間に資本関係などはなく、同社のグループ企業ではない。
「達史氏の遺産を相続した母親の資金を頼って正通氏が始めた事業です。ですが本人は最近まで取締役でもなく、会社と雇用契約も結んでいませんでした」(関係者)
 そんな形でここ5年間で事業を拡大してきた中和興産の綻びが顕在化したのが昨年だった。国から委託を受けて保育事業の助成などを行なっている公益財団法人 児童育成協会(本部東京)は、昨年12月22日付けで同社に「請求書」を送り、22年度に「ふしみの森めぐみ保育園」に交付した助成金のうち4696万円余りが過払いだったとして、本年1月11日までに返還するように命じた。

児童育成協会から中和興産に届いた「請求書」

同社の申請や運営の実態について証言する元職員ら

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中和興産の本社

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