【シリーズ・住宅不動産情報】⑱──計画変更や延期が相次ぐ札幌の再開発事情
拍車かかる資材高・人手不足
ラピダス特需で再開発に暗雲

2024年05月号

着工延期と計画変更が確実な「北5西1・西2再開発事業」

冬季五輪誘致断念に加え、北海道新幹線延伸工事の遅れにより札幌中心部の再開発機運が後退する中、建設資材高騰や次世代半導体工場「ラピダス」の建設による人手不足が重なり、再開発事業の計画変更や着工延期が目立っている。インバウンドや国内観光客がコロナ禍前の水準に回復し、札幌中心部にも活気が戻りつつあるが、再開発を契機にした街のリニューアルには不透明感が広がっている。

(佐久間康介)

避けられない計画変更


 北海道新幹線札幌延伸に合わせて整備される中央区の北5西1・西2地区市街地再開発事業は、当初計画されていた本年3月の着工が2年ほど延期されることになった。
 当初、2500億円とされた建設費が資材や人件費の高騰で3割以上膨らむためだ。このため再開発組合と建設を担当する清水建設(本社東京)は、計画を見直さざる得なくなった。この再開発事業では地権者らによる再開発組合が発足しており、市がこの地区の都市計画決定も行なっている。
 都市計画決定とは、都市計画法に基づき将来のまちづくりに必要な用途地域や道路、公園などの施設を決定するもの。今回の見直しにより、一度決めた都市計画決定も変更せざるを得なくなる。
 札幌市の関係者によると、「市街地再開発事業で都市計画決定を行なった後に変更があるのは、珍しいことではない。直近では、北8西1市街地再開発事業でも2棟のマンション計画が1棟に変更になった例がある。ただ今回は北8西1以上に大幅な変更になるのではないか」と話す。
 当初計画は、地上23階、地下4階、高さ約245メートル、延べ床面積は約38万6700平方メートル。エスタ時代にもあったバスターミナルや商業施設階の内容は大きく変わらないと見られ、計画変更の対象は上層階のホテル・オフィスのようで特にホテルの動向が鍵を握りそう。「札幌延伸により札幌と倶知安が約30分で結ばる。世界の富裕層を対象にしたラグジュアリーホテルの誘致は揺るがないだろう。変更は、主としてオフィス部分になるのでは」と札幌市のOBは話す。
 現時点では設計変更は具体化していないが、着工は2年間延期され開業も2年遅れの30年度になりそう。

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