告発・絶望の学府㉛
道「因果関係」否定貫く

2024年05月号

昨年5月に謝罪を受けた遺族は、それが何を詫びるものだったのかを理解できずにいる
(亡くなった学生の遺族が4月4日付で北海道へ送付した『ご連絡』)

江差パワハラ死問題で交渉決裂
遺族落胆「謝罪は何だったのか」


記者会見で地元報道が質問を繰り返しても、議会で複数の会派が追及を続けても、ほかならぬ当事者の代理人が粘り強く交渉を重ねても、その役所は毫も動くことがない。北海道立高等看護学院の在学生自殺問題で、第三者調査が認定したハラスメントと自殺との因果関係を道は一貫して否定し続け、賠償交渉で譲歩した遺族の提案さえも拒絶した。真意を問われた知事は、事ここに到ってなお常套句を繰り返すのみ。「誠意をもって対応する」と――。


取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。55歳

遺族困惑、謝罪対応後悔


「こうなるとわかっていたら謝罪を受けるべきではなかった」と、その女性(47)は悲嘆に暮れる。
「今思えば、去年の謝罪の時にはすでにこういう方針が決まっていたんじゃないかと感じます。第三者調査がどうなろうと、最初からパワハラとの因果関係を認めないつもりだったんじゃないかって…」
 涙ながらに語るのは、北海道立江差高等看護学院で教員のハラスメントを苦に命を絶った男子学生(当時22)の母親。本誌などが繰り返し報じてきた通り、2019年9月に長男を喪ったその人は一昨年5月に初めて被害告発の声を上げ、学院を設置する北海道に事実調査を求めた。関係者からの聴き取りを重ねた道の第三者調査委員会は昨年3月、少なくとも3人の教員による4件のハラスメントを認定し、その全件が自殺に影響したとの結論に到る。これを受けた鈴木直道知事は「深くお詫び申し上げる」とのコメントを発表、同5月には担当局長らが母親に直接頭を下げて謝罪することとなった。
 ところが。

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「今までの対応に誠意があったか」の問いにも、鈴木直道知事は「引き続き誠意をもって」
(4月5日午後、北海道知事定例記者会見)

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