つしま医療福祉グループが能登半島地震で介護支援
被災者の苦難に寄り添って不自由な高齢者をサポート

2024年03月号

「いしかわ総合スポーツセンター」で避難者のトイレ往復を介助するつしま医療福祉グループの職員
(写真は同グループ提供)

厚生労働省からの要請を受け、つしま医療福祉グループ(本部札幌市豊平区・対馬徳昭代表)が1月中旬から能登半島地震の被災地に職員を派遣し、避難所で介護が必要なお年寄りを支えている。1月15日に出発した第1班を皮切りに、22日からは第2班、28日からは第3班、 2月4日からは第4班が向かい、それぞれ1週間現地で活動に従事。同グループでは第4班以降も継続派遣を決めている。今回の支援の概要をはじめ現地の様子や介護に当たった職員の声を紹介する。

(工藤年泰)

介護のプロが現地で活躍


「活動の最後の日、札幌に戻ることを伝えると、泣きながらありがとうと言ってくださる避難者もおられました。地震被災地への介護支援は私自身これで3度目。現場での仕事には慣れましたが、何度行っても胸が痛みます」
 こう語るのは、1月15日から能登半島に入った第1班のリーダー、新田太一さん(49)。
 今回、対馬代表が「精鋭揃い」と太鼓判を押した先発隊の5人は、社会福祉法人ノテ福祉会(本部・札幌市豊平区)と社会福祉法人日本介護事業団(第1地域本部・空知郡奈井江町)の運営施設でそれぞれ施設長を務めている職員。冒頭の新田氏もノテ福祉会が運営する介護付き有料老人ホーム「天」(札幌市豊平区)の施設長を務めている。
 今回の被災地支援は、石川県から寄せられた1・5次避難所(※宿泊施設などの2次避難先へ移る被災者を一時的に受け入れ、避難先の調整や健康状態の確認を行なう場所)への介護職員派遣依頼を受けての取り組み。現地の依頼を受けた厚生労働省が1月13日につしま医療福祉グループに要請し、対馬代表は直ちに編成に着手。2日後の15日に第1班の出陣式をアンデルセン福祉村「ノテげんきのでる里」(札幌市清田区真栄)で行ない、そのまま現地に向かうという迅速さだった。
 これまで同グループでは東日本大震災(2011年)を皮切りに、胆振東部地震(18年)でも同様の介護派遣を行なっており、今回の支援にもそれらの経験が生かされている印象だ。
 第1班が訪れたのは、今回の震災を受けて県が急遽、1・5次避難所として使うことを決めた「いしかわ総合スポーツセンター」(金沢市)。
「スポーツセンターのメインアリーナとサブアリーナにテントを張るなどして多くの被災者を受け入れていました。
 今回の能登半島地震では土砂崩れで道路が寸断されたうえ、水道などのライフラインも止まり老人施設の多くが孤立状態になった。特別養護老人ホームをご利用されていた入所者全員が身を寄せたケースもあり、寝たきりの人も少なくなかった。そのような要介護度が高い皆さんを中心にお世話をさせていただいた」(新田さん)
 職員たちは、どのようなケアに従事したのか。
「私たちが担ったのは夜間(午後8時から午前8時)のシフト。サブアリーナで寝起きしている100人あまりのお年寄りのケアでは、就寝中の見回りをはじめ、食事の介助、紙パンツの交換やトイレ往復のサポートなど多岐に渡りました」(同)
 新田さんによれば、震災発生から一度もお風呂に入れないまま過ごしている人が少なくなく、食事も避難所では簡易的なものが中心。決して快適とは言えない環境の中で、避難者のQOLが下がったり感染症などへの罹患が気掛かりだったという。
「それでも思い出話を聞かせてもらったり、こちらが北海道の話をしたりと、皆さんと触れ合った時間は非常に貴重でした。大変な思いをしているのにメンバーに笑顔で接してくれ、感謝の言葉もかけてもらった。被災された方々に1日も早く元の生活が戻ってくることを祈るばかりです」(同)
 対馬代表は、「私たちは現地がシビアな状況であることは経験上分かっている。職員たちは介護のプロとして力と知識を最大限発揮して、限られた時間を被災地の人に尽くしてもらいたい」と話している。

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メインアリーナに立ち並ぶ避難者用のテント(同)

夜間の見回りは欠かせない(同)

食事の介助では笑顔を心がけた(同)

派遣職員を激励する対馬代表(1月15日の出陣式)

メインアリーナに立ち並ぶ避難者用のテント(同)

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