告発・陸の蟹工船〈4〉
市、事業所に合流迫る

2024年03月号

虐待の現場とされる牧場の航空写真――中央上部①及び②の建物で障碍者3人が生活していた
※ 画像の一部加工は原告代理人

恵庭牧場・障碍者虐待疑い訴訟
事業所報告「事実と異なる」と市


本誌などが報告を続けている恵庭市の牧場での障碍者虐待疑い問題で、当事者から訴えを起こされた自治体が地元の相談支援事業所へ「訴訟告知」を行なっていたことがわかった。早期に虐待の存在を疑っていた事業所を、市が自分たちの側につける形で裁判に合流させようというのだ。これに驚いた原告側は近く、同様の訴訟告知を行なって事業所に協力を求める考え。長期の虐待隠蔽が問われる事件の行方は、なお予断を許さない状況だ。

取材・文=小笠原 淳

市は数年前に実情把握か


 昨年10月号以降の誌面で報告してきた通り、恵庭市郊外の牧場で長期間の障碍者虐待疑いが表面化したのは、同6月中旬のこと。知的障碍のある男性3人が劣悪な環境下で最長40年以上も牧場労働を強いられ続け、その間に支給された年金の大半を詐取されていたという。牧場の経営者は恵庭市議会議長を務めたこともある元市議(故人)で、被害男性らは牧場主没後の2021年までそこに身を寄せていた。
 のちに裁判を闘うことになる関係者らによれば、その虐待疑いは遅くとも2016年には恵庭市の知るところとなっていた。当時、地元の相談支援事業所が虐待案件として扱わざるを得ない考えを示したにもかかわらず、同市はこれを聴き入れず問題を放置し続けたとされる。
 被害を訴える男性たちは昨年8月下旬、恵庭市と牧場とに損害賠償を求める訴えを札幌地方裁判所に提起。前後して地元議会では虐待の事実関係などを問う声が複数の会派から起こり始めたが、市は訴訟を理由に明答を避け続け、担当課の対応は「裁判で事実をあきらかにしていく」との答弁に終始した。
 引き合いに出された「裁判」が提訴から2度めの口頭弁論を迎えたのは、年が明けた1月30日のことだ。

恵庭市が作成した公文書には「足が凍傷」などの記述が(2016年7月8日付『電話・口頭受理事件処理書』)

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