2024 道東・根室特集──北方領土元島民の思い
千島歯舞諸島居住者連盟理事・根室支部長 角鹿泰司さんに訊く
置き去りにされる四島問題 何より望む北方墓参の再開

2024年02月号

生まれ故郷の勇留島を示す角鹿さん(12月18日、根室市内)

ロシアによるウクライナ侵攻に端を発して日ロ関係が悪化、北方領土問題は戦後最も厳しい局面に置かれている。元島民たちの平均年齢は88歳になり、もはや生きているうちに島は戻らないという酷薄な現実を突きつけられたも同然の状況だ。これまで元島民らが積み上げてきた返還運動の思いを、後継者や三世、四世にどう引き継いでもらうかは、今後の運動の在り方を左右する大きな課題。歯舞群島勇ゆりとう留島出身で公益社団法人千島歯舞諸島居住者連盟理事・根室支部長を務める角鹿泰司(つのか・やすじ)さん(86)に返還運動の〝いまとこれから〟を訊いた。

(佐久間康介)

|市のキャラバン隊が復活 返還運動のたすきを繋ぐ|


 ──2023年を終えるにあたり、どういうお気持ちですか。
 角鹿
 元島民の平均年齢は88歳と高齢。返還運動を担う中心世代は二世たち後継者に移行していますが、後継者も60歳を超えており、互いに元島民なのか、後継者なのかが分からないような年齢に差し掛かっています。後継者は今後、三世、四世にどう向き合って啓発活動に参加してもらうか、ここが大きな課題です。
 政府には、少しでも早く北方領土返還運動に手を付けてほしいというのが一番の望みですが、今は置き去りにされている状態。生きるところ余命幾ばくという元島民たちの願いは、洋上慰霊だけでなくて実際に北方領土の土を踏んで先祖のお参りをしたい、その強い思いしかありません。元島民たちが自分たちの代では、もうどうにもならないという心境になっているのは間違いないでしょう。原点に返って78年前に島で起きたさまざまな出来事の仔細を若い人たちに伝えることにより、三世、四世が返還運動に奮起して啓発活動をやっていくんだという強い意志を持ってくれれば、という気持ちです。
 ──元島民は半ば諦めている。
 角鹿
 今では一世の人たちよりも、ロシアの人たちの方が、島に長く住んでいる現実があります。ロシア人の二世、三世もいます。日本の三世、四世の人たちが、ビザなし交流や弁論大会で出て来る言葉の中には、70数年前の日本の姿になってほしくないという言い方をする場合もある。元島民が味わったような苦しみをロシア人にも経験させたくないと。
 ──ロシアのウクライナ侵攻で、かつてない厳しい状況になりました。
 角鹿
 いまロシアと日本は互いに制裁を行なったりしていますが、ウクライナ戦争が収まれば局面が変わるかもしれません。甘い見通しと言われればそれまでですが、私の肌感覚としてロシアの一般の人たちは、日本に好意的だと思います。穿った見方をすると、日本を利用するということになるかもしれませんが、いずれ日本を頼ってくることは間違いないと私は見ています。
 ──三世、四世への(返還運動の)引き継ぎは順調ですか。
 角鹿
 今年は、根室市の事業として50数年ぶりにキャラバン隊が組織され私も参加しました。市長、副市長、議長のほか、後継者、三世、四世など約20人と一緒に、3泊4日で東京と名古屋、滋賀県を訪問しました。キャラバン隊は千島連盟の後継者たちも毎年行なっていますが、今回、市が復活させたのは画期的だと思っています。
 こういう活動を通じて後継者を中心にしながら元島民も参加できる人たちは出来る限り参加して、三世、四世に返還運動のたすきを繋いでいかなければならないと思います。

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