新春Interview
札幌市長 秋元 克広氏
抗い難かった「五輪断念」の流れ 札幌をGX投資の金融センターに

2024年01月号

札幌市長 秋元 克広氏

3期目に入った秋元克広市長は、札幌冬季五輪の招致断念という重い決断を迫られた。これまで9年間にわたり取り組んできた招致活動は、先の東京五輪の贈収賄事件や談合事件によって市民理解が広がらず最悪の結末を迎えた。一方で明るい動きとして注目されるのが、世界中からGX(グリーントランスフォーメーション)に関する資金・人材・情報が集積するアジアと世界の「金融センター」実現を目指す取り組みだ。千歳市で建設が始まっているラピダスの半導体工場との相乗効果が出ることも期待され、札幌の新たな価値創出に繋がりそうだ。冬季五輪招致断念という決断の背景や今後の市政課題について秋元市長に訊いた。

(11月24日取材 工藤年泰・佐久間康介)

東京大会の汚職事件が直撃 市民理解進まなかった五輪


 ──冬季オリンピック・パラリンピックの招致を事実上断念した経緯と今の気持ちを聞かせてください。
 秋元
 招致については、7割近い市民の賛成と市議会の決議を受け、2014年11月から取り組みを開始したもので、18年の北海道胆振東部地震発生後は招致年次を2030年に変更しましたが、市民、関係団体と連携しながらこれまで約9年にわたり進めてきました。
 一時は、招致実現の可能性が相当高まったと実感していましたが、21年にコロナ禍の中で開催された東京五輪の頃からオリンピックに対する不信感のようなものが高まっていきました。決定的だったのは、22年の夏以降に贈収賄や談合の問題が出て、個人の問題ではなく組織委員会の取り組みにかかわる事案になってしまったことです。
 23年の札幌市長選挙では、報道機関各社の出口調査などで「6割の市民が反対」といった報道がある中、市民の支持や理解が段々と低下してきているのを感じていました。昨年のこのインタビューでもお話ししたように、第三者機関を作って運営の見直しを進め市民対話も重ねて行ないましたが、なかなか回復には至らない感じはありました。市民理解が広がらない中で招致活動するのは、なかなか厳しいというのがJOCとの共通理解。私としては、非常に残念な思いではありましたが、さる10月の発表に至ったという流れです(※以後、IOCの決定により2038年までの開催が不可能な見通しになった)
 ──正直、問題が起きた東京五輪のとばっちりを受けた印象です。今後はどう対応しますか。
 秋元
 将来的に札幌、北海道で開催したいという声は今でも聞こえてきています。世界に誇るウィンタースポーツシティである札幌が冬季五輪を開催するポテンシャルを有していることは疑いようがない。今後、このテーマにどう向き合っていくか、じっくりと市民と議論していく必要があると考えています。
 ──話題を変えましょう。第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン「アクションプラン2023」の重点政策である子育て支援、経済活性化、脱炭素社会の実現に向け、どう取り組んでいきますか。
 秋元
 少子化は待ったなしの課題です。今回の「アクションプラン2023」では、子ども医療費助成制度の対象を高校3年生まで拡大することをはじめ、「子ども・子育て支援」の大幅な強化に踏み切ることにしました。子どもたちの健やかな成長を支えるとともに、切れ目のない息の長い支援を届けることにより、人口減少の緩和に繋げていきたい。
 また、少子化の背景には若い世代の経済力の弱さがあると考えられることから、札幌駅・大通周辺地域の再開発事業や新幹線札幌延伸に関連する周辺環境の整備など、都心のリニューアルを進め、市民、国内外の観光客、企業にとって魅力と活力あるまちを実現することによって雇用の創出など地域経済の更なる活性化に繋げていきます。

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