北大のスラブ研に流れた「ウクライナの詩」
有名詩人・ナタルカさんが朗読 明日をも知れぬ恋人たちの運命

2024年01月号

自作の詩を朗読するナタルカさん
(11月14日、北大のスラブ・ユーラシア研究センターで。同提供)

11月14日、北海道大学のスラブ・ユーラシア研究センターで「ウクライナ文化の夕べ」と題したシンポジウムが開かれ、同国の女性詩人、ナタルカ・ビロツェルキヴェツさんが戦争の悲しみを思わせる詩を披露した。参加者の心を打ったこの日の模様を先月号で「戦時下のウクライナ」を報告した元朝日新聞記者でジャーナリストの岡野直氏(63)がレポートする。

ジャーナリスト・岡野 直

心を打った女性詩人の作品


 ウクライナ人兵士が、前線から一時、まちに戻り、恋人と会う。しかし甘美な時間は短く、兵士は再び前線へ…。
 そんな、恋も許されない時代を生きる人々を、私は2022年の11月から12月にかけてウクライナ各地を回りながら取材した。別れを惜しむ恋人を含め、出会って話を聞いた人は百人を超える。みな「国を守りたい」と言っていた。士気は高かったが、私は「ウクライナ人に心が安らぐ時はあるのだろうか」と、今もしばしば、考える。
 そんな思いでいたら、先だって「ウクライナの詩」をテーマにしたシンポ「ウクライナ文化の夕べ」に参加することができた。11月14日、北大のスラブ・ユーラシア研究センターの一室で開かれ、戦争の悲しみを思わせる詩を含む7篇を、札幌に滞在中のウクライナ人詩人が朗読した。
 ウクライナといえば戦場や兵器の情報がテレビやネットであふれている。一方、あまり知られていないが、文学など多様な文化を誇る国でもある。詩人たちがその一角を担う。
 自作の詩を北大で朗読したのは、ナタルカ・ビロツェルキヴェツさん。首都キーウ出身の女性詩人で、これまで詩集5冊を出した。その一部は英訳され、昨年、北米における詩の最高賞のひとつにもノミネートされた。その抒情性が高く評価されている人だ。
 スラブ・ユーラシア研究センターは、ウクライナを含むスラブ諸国や東欧、中央アジアなどの研究拠点。外国人研究員も多く所属しており、そのひとりであるウクライナ人社会学者のミコラ・リャプチュク教授は昨年秋、着任した。実はナタルカさんはリャプチュク教授の夫人。夫婦で来札したため、せっかくの機会だからと、「ウクライナ文化の夕べ」が催されたのだ。

ウクライナの中学生が描いた絵
(提供・O. ニコレンコ・ポルタワ国立教育大教授)

(おかの・ただし)1960年札幌市出身。東京外語大学ロシア語科卒業。85年朝日新聞社入社。モスクワのプーシキン・ロシア語大学に留学後、西部本社社会部を経て東京社会部で基地問題や自衛隊・米軍などを取材。特派員としてルワンダ虐殺、東ティモール紛争、アフガニスタン戦争など紛争地の取材も多い。2021年からフリー。ロシア語の全国通訳案内士。著書に『自衛隊―知られざる変容』(朝日新聞社)、近著に『戦時下のウクライナを歩く』(光文社新書)。63歳

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リャプチュク教授と桐野夏生さん(東京都中央区の日本ペンクラブで 撮影・岡野 直)

空襲を逃れキーウの地下鉄構内に避難する市民たち(撮影・岡野 直)

リャプチュク教授と桐野夏生さん(東京都中央区の日本ペンクラブで 撮影・岡野 直)

空襲を逃れキーウの地下鉄構内に避難する市民たち(撮影・岡野 直)

ウクライナの中学生が描いた絵
(提供・O. ニコレンコ・ポルタワ国立教育大教授)

(おかの・ただし)1960年札幌市出身。東京外語大学ロシア語科卒業。85年朝日新聞社入社。モスクワのプーシキン・ロシア語大学に留学後、西部本社社会部を経て東京社会部で基地問題や自衛隊・米軍などを取材。特派員としてルワンダ虐殺、東ティモール紛争、アフガニスタン戦争など紛争地の取材も多い。2021年からフリー。ロシア語の全国通訳案内士。著書に『自衛隊―知られざる変容』(朝日新聞社)、近著に『戦時下のウクライナを歩く』(光文社新書)。63歳

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