訴えを起こした巡査長は現在、網走署の所属だが、違法捜査当時は機動隊員だった
(札幌市南区の北海道警察機動隊庁舎)
合法古式銃所持で不当捜査か
「精神異常」扱いで降下評定も
趣味のモデルガンを入手しただけで銃刀法違反の疑いをかけられ、違法捜査の被害に遭った上に職場で不利益な扱いを受けた――。そう訴える声の主は、現職の警察官。「おかしいものはおかしい」の思いに従って11月下旬、職場である北海道警察に損害賠償を求める裁判を起こした。問われた“事件”は不起訴処分に終わったものの、理不尽な被害はその後も回復できていない。「組織を訴えるとは精神異常に違いない」と、今なお不当な扱いが続いているという。
取材・文=小笠原 淳
北海道警察に損害賠償を求める訴えを11月20日付で札幌地方裁判所へ起こしたのは、北見方面網走警察署に勤務する20歳代の男性巡査長。訴状などによると巡査長は2022年から違法捜査の被害に遭い、職場で不利益な扱いを受けることになったという。発端は、趣味のモデルガン収集をめぐる任意捜査だった。
のちに捜査の対象となる模造古式銃を巡査長が入手したのは、22年1月のこと。当時札幌市南区の道警機動隊に所属していた巡査長は、インターネットの「ヤフー! オークション」で購入したその銃について、合法品であるかどうかを念のため札幌南署へ問い合わせた。違法所持にはあたらない要件を確認するための調査依頼だったが、南署は「警察官に現物を確認させる」と対応、巡査長が「銃を見なくても除外要件は調査できる」「私自身が警察官」と伝えても担当者は聴き入れず、ほかの警察官に銃を見せるよう言い募ったという。
ほどなく、江別署の薬物銃器対策課員を名乗る警察官らが巡査長の自宅を訪問、銃の任意提出を求めた。部屋の主がこれを断ると、捜査員らはその人の上司にあたる機動隊第二中隊長に連絡。それを受けた中隊長に「おれの顔を立てて提出を」と説得され、巡査長は任意提出に応じざるを得なくなる。結果、3カ月ほどを経てその人は“容疑者”となった。
22年4月、家宅捜索。容疑は銃刀法違反で、先に提出したヤフオクの古式銃に加え、すでに所持していた合法の無可動銃14挺ほどが巡査長宅から押収された。この際、捜査員らは差し押さえの手続きをとらず、必要書類の一部を隠して巡査長の署名を不正に取得、持ち主自らの意志でモデルガンを任意提出したかのような記録を捏造したという。事件は結果的に嫌疑不十分で不起訴となったが、同年9月まで検察の取り調べに応じることになった巡査長は、任意捜査を受けるに際して有給休暇を利用するよう指示され、併せて当直勤務から排除されることに。時期を同じくし、本部機動隊から網走署への異動が命じられた。