告発・絶望の学府㉙
「息子は戻らない」

2024年01月号

第三者調査で認められた自殺とハラスメントとの因果関係が不意に否定され、すでに1カ月以上が過ぎた
(2023年11月下旬、北海道内)

江差パワハラ自殺・遺族の慟哭
因果関係否定で「頭が真っ白に」


本誌前号で報告した“手のひら返し”が波紋を呼んでいる、北海道立江差高等看護学院の在学生自殺問題。教員によるパワーハラスメントと学生の死との「相当因果関係」をめぐって道の主張が二転三転する中、渦中の遺族が改めて取材に応じ、当局への不信感をあらわにした。「被害を認めた第三者調査は何だったのか」――。当事者の疑問に応える真っ当な説明は、寝耳に水の連絡から1カ月以上が過ぎた今も聴こえてこない。


取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。55歳


また「なかったこと」に…


「謝罪のあった5月以降、道からは何の連絡もなく、10月末に初めて電話があったと聴いて『電話?』と思いました。すごく軽く扱われている感じがして…」
 そう打ち明けるのは、北海道立江差高等看護学院のパワーハラスメントで最悪の被害に遭った学生の遺族。同学院に在学していた長男(当時22)を2019年9月に喪った女性(47)、その人だ。語られるのは、23年10月に学院を所管する北海道から届いた連絡。道の顧問弁護士から女性の代理人・植松直(すなお)弁護士(函館弁護士会)へ電話があり、学生の死が必ずしも教員のハラスメントに直結するとは限らないとの認識が示されたという。
 男子学生がハラスメントを苦に自ら命を絶った疑いは22年5月号以降の本誌面で折に触れ伝えてきたところで、のちに発足した道の第三者調査委員会が23年3月までにその被害を認定するに到った。委員らの報告を受けた道は同5月、遺族である女性に直接頭を下げて謝罪。鈴木直道知事も公式サイトのコメントや知事会見の対応などで謝意を表明することになる。その道が僅か5カ月後に突如、ハラスメントと自殺との因果関係を否定し始めたのは、当事者にはまさに寝耳に水だった(前号までに既報)。想定外の変節に、学生の母親は失望を隠さない。
「結局、道は問題をうやむやにして、こちらが諦めるのを待っているんじゃないか。『めんどくさいことになった』としか思っていないんじゃないか、という気がします」
 失意は、不信を招く。また振り出しに戻された、また「なかったこと」にされるのか――、と。

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担当者の謝罪を受け容れた遺族は「こんなことになるなら受けるべきではなかった」と悔やむことに(5月15日午後、札幌市内)

女手一つでその子を育て上げた母親は「決して揉めたいわけではない」としつつ、同時に「ここで諦めるわけにはいかない」とも

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