オホーツク特集
網走市長 水谷 洋一氏 (Mizutani Youichi)
看板の“交流”が復活した網走 食と観光、子育てを一層支援

2023年12月号

網走市長 水谷 洋一氏 (Mizutani Youichi)

網走市は今年、能取湖のホタテ稚貝の大量死や酷暑による農作物へのダメージに加え、昨春に知床沖で起きた観光船事故の影響で観光面でも苦戦を強いられた。それらの課題と向き合っているのが、昨年11月から4期目に乗り出した水谷洋一市長(60)だ。公約の「子育て世代に寄り添う」政策では幼稚園や認定こども園、保育園、小中学校の給食無償化に踏み切り、若い世代の負担軽減を実現。来年10周年を迎える「オホーツク網走マラソン」では道外参加者のリピーター率が約4割を占め、エントリーが増加するなど好材料も少なくない。アフターコロナの中で未来を見据え采配をふるう水谷市長に、まちの現状と展望を訊いた。

(10月25日収録)

|受難続きになった一次産業 救いのひとつは秋鮭の豊漁|


 ──今年の春先には、地元でホタテ稚貝の大量死という出来事が起きました。
 水谷
 3月下旬、西網走漁協が育てていた能取湖のホタテの稚貝が約2万粒、生産計画量の91%が大量死しているのが判明し、被害総額は約6億8千万円にのぼりました。
 この事態を受け、市で4月3日にオホーツク総合振興局、西網走漁協、網走水産試験場、東京農大と「能取湖ホタテ稚貝へい死対策本部」を立ち上げました。10日には大量死の原因究明、再発防止、モニタリング体制について科学的な検証を行なうため委員会を設置し、検討を進めていますが、現在まで原因は特定されていません。委員会では昨年12月に発生した大時化と高潮による影響、融雪期による低塩分化などが関係しているとみており、調査、分析を行なっている最中です。
 ──地域への影響は。
 水谷
 この出来事で地元の漁協として約7億円もの売り上げが失われたわけです。死んでいても引き上げる作業をしなければならないので経費もかかる。自分たちが放流する稚貝もないものですから他所から買ってこなければなりません。大変厳しい状況です。
 ──市の支援策などは。
 水谷
 状況を直に把握し、行政として何ができるかを判断したかったので、能取湖の現場を船から視察しました。漁協に対しては斃死した稚貝回収や生存貝放流追跡調査、加えて原因究明・モニタリング調査負担金などを支援したところです。
 ──中国による日本産水産物の全面輸入禁止では、ホタテなどが大きな影響を受けているようです。
 水谷
 今の段階で今回の禁輸に直結したホタテの価格低下は見られていません。しかし、禁輸が長期化すると在庫増も想定されるので、来年以降の浜値の低下に対しては非常に不安を持っています。

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大量死した稚貝を能取湖の船上で確認する
水谷市長(右側)(網走市提供)

北海道を満喫できる旅ランとして定着した「オホーツク網走マラソン」(同)

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