告発・陸の蟹工船<2>
「お答えを控える」

2023年11月号

柏野大介議員(左上のモニター内)の質問に、市の担当部長ら(左下)は「裁判になっているので」と明答を避け続けた(9月21日午後、恵庭市議会本会議)

隠蔽疑いに恵庭市“無答弁” 障碍者虐待疑惑で議会追及

道央・恵庭市の牧場で長期間の障碍者虐待が疑われている問題で、地元市議会の野党系議員らが市の隠蔽疑惑を相継いで追及した。本会議と委員会で事案の事実関係などを質された理事者側は「お答えを控える」との答弁を連発、その理由を問われては曰く「裁判になっているため」。指摘される不適切な対応があったか否かは、飽くまで法廷であきらかにしていくという。市民が傍聴する開かれた議会でのやり取りは、市にとっては「場外戦」だった――。


取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。54歳

議会質問「場外戦」と市側


 20人あまりの傍聴人が見守る中、堂々めぐりの問答が続く。
「裁判になっているから答弁できないというのは、まったく理解できないところです」
 9月21日招集の恵庭市議会本会議で追及されたのは、長期間にわたる障碍者虐待疑惑。否、その疑惑を市が隠蔽していた疑いだ。一般質問に立った柏かしわの野大介議員(市民と歩む会)は、事実確認の問いに明答を返そうとしない市側の姿勢に、たびたび「理解できない」とかぶりを振ることになる。
「市に非がないというのであれば、それをこの場で主張していただいても裁判の結果はなんら変わらないと思いますが」
 引き合いに出された「裁判」は、恵庭市内の牧場で起きたとされる虐待・横領の被害者たちが起こした訴訟。本誌前号で報告した通り、いずれも知的障碍のある男性3人が8月下旬、牧場関係者と市とに損害賠償を求める訴えを札幌地方裁判所に提起した。
 原告代理人などによれば、市は2016年ごろには問題の牧場の実態を把握していたようだ。だがその情報を共有した地元の相談支援事業所が虐待案件として対応する考えを示すと、担当課がこれに待ったをかけたという。理由はあきらかでないが、原告代理人らが強く疑うのは当時の牧場経営者(故人)への忖度。牧場の主は、市議会議長を務めたこともある元議員だった。

これでは市の信頼が落ちる。後ろめたいことがないならば堂々と発信を」と小林卓矢議員(10月4日午前、恵庭市議会厚生消防常任委員会)

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