エア・ウォーターが技術と知見を結集
陸上養殖の普及を目指す一大拠点「杜のサーモンプラント・東神楽」

2023年10月号

飼育用水槽を紹介するプラントスタッフの紙谷麻里江さん

Business Report

旭川のベッドタウンで「花のまち」として知られる上川管内の東神楽町。この道北の地方都市で今年5月末から稼働を始めたのがエア・ウォーター(本社大阪)が手がける初の陸上養殖施設「杜(もり)のサーモンプラント・東神楽」だ。ここで展開されているのは完全屋内によるニジマスの養殖事業。ほかの魚介も一緒に育てる複合養殖や、魚を育てる際に出る排水で水耕栽培し、排水低減と農作物生産の一挙両得を目指すアクアポニックスなどさまざまな独自の試みも目を引く。これまでにない事業が動き出したことに、地元・東神楽町も歓迎ムードだ。エア・ウォーターが目指すのはこの施設をショールームとして、自社の陸上養殖プラントを普及させていくことにあるという。
(8月9日取材)

食通社員のアイデアから実現に向かった養殖事業


 東神楽町の緑豊かな郊外に立地し、敷地面積4260平方メートルの上に建つ「杜のサーモンプラント・東神楽」。
 延床面積約1000平方メートルの施設内には養殖用として直径7mの飼育用水槽4基、同4mの仕上用水槽を4基備えている。後者の仕上用水槽の中に入っているのは人工海水。淡水の飼育用水槽でしっかり年月をかけて大きく育てたニジマスを数週間程度、この水槽の海水で過ごさせることで、ぐっと味が良くなるのだという。この海水を使うことで「サーモン」の名が冠されていることもある。
 育てる魚の大きさの目安は2・5キロ台で、自然界ではそれまで育てるのに4~5年を要するところを、このプラントではおよそ2年で成育する計画だ。
 エア・ウォーターで陸上養殖計画が正式に動き出したのは2021年9月。それから2年を待たず同プラントの稼働までに至った形だ。ただ同事業の発端は2019年、エア・ウォーター北海道(本社札幌)が全従業員を対象に行なった、“地域に根差し、地域を盛り上げる取り組み”のプラン募集からだった。
 ここで立役者になったのが、現在同プラントのスタッフとして働いている紙谷麻里江さん(陸上養殖グループ)だ。
 以前、同社の旭川事業所で事務員として勤務していた紙谷さんは食べ歩きが趣味。美味しい本場の味を求めて道内各地に直接足を運ぶのも珍しくないが、日本海沿岸のまちに赴いた折、お目当ての海の幸が不漁のため味わえなかったという出来事があった。
 それで不安を感じ関心を持ち始めたのが、漁獲量そのものの減少だった。紙谷さんの中に食資源確保のため自社で魚介を育てる事業はどうか、との発想が浮かび、前述のプラン募集に挑戦したという流れ。それが見事選ばれて今回のプラント稼働まで進むわけだが、発案者ということで紙谷さんは同事業の第1号スタッフに抜擢されることになる。
「美味しい魚介類を食べられなくなったら困る、ということでいろいろ調べていったら陸上養殖のサーモンに行き着きました」(紙谷さん)
 事業についての紙谷さんの当初案は、育てた魚を自ら販売するというものだった。だが会社が選択したのは魚の生産・販売ではなく、魚を育てることに資する事業展開、陸上養殖に必要な技術や資器材を販売するビジネスだった。それが今回の「杜のサーモンプラント・東神楽」の存在意義となっている。

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今回の取り組みの発案者となった紙谷さん(左)と工学博士の資格を持つ大城優さん

「杜のサーモンプラント・東神楽」の全景

このニジマスが2年後には2.5㎏に

プラント内の水槽の水質はセンサーで常時管理されている

複合養殖しているキタムラサキウニ

飼育用水槽で成育中のニジマス

今回の取り組みの発案者となった紙谷さん(左)と工学博士の資格を持つ大城優さん

「杜のサーモンプラント・東神楽」の全景

このニジマスが2年後には2.5㎏に

プラント内の水槽の水質はセンサーで常時管理されている

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複合養殖しているキタムラサキウニ

飼育用水槽で成育中のニジマス

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