新築工事が進む「寿都寿海荘」の工事現場(同町海進地区)
9月28日に告示され10月3日に投票を迎える寿都町(片岡春雄町長)の町議会議員選挙(定数9)で、立候補を予定している異色の新人が田原誠氏(74)だ。寿都に生まれ近年故郷にUターンしてきた田原氏は核のゴミ持ち込みに反対するひとりだが、「そもそも問題の本質は片岡町長が長期独裁を敷いてきた弊害にある」として独自に調査・追及を続けている人物。核のゴミ問題の影に隠れた、地元の社会福祉法人徳美会がらみの片岡町政の死角とは──。
(本誌編集長・工藤年泰)
片岡町政と関係が深いとされる、地元の社会福祉法人徳美会とはどのような存在なのか。社福としての設立は1953年と古く、今年で創立70周年を迎える老舗だ。本部を寿都町に置き、現在の理事長は徳野幸代氏。手掛けている事業は高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉と幅広く、寿都町と島牧村に拠点施設を多く展開しているほか、札幌市内にも定員180人規模の大きな保育所「旭ヶ丘保育園」を有している。
寿都町内には特別養護老人ホーム「寿都寿海荘」(定員50名・短期入所5名)のほか、障害者支援施設「歌棄(うたすつ)慈光園」(定員80名・短期入所4名)、児童養護施設「歌棄洗心学園」(定員70名)があり、高齢者介護では特養「寿都寿海荘」での施設介護を中心に、デイサービスや訪問介護も行なっている。
人口2700あまりの寿都で福祉事業に携わる他の事業者は見当たらない。寿都町漁協が産業分野で絶対的な存在となっているように、このまちの福祉全体が徳美会に支えられていると言っても過言ではない。町内の徳美会関連施設で働いている職員は数百人にのぼるとみられ、雇用や経済波及効果の面でも大きな影響力がある。
この中で現在進められているのが、老朽化を理由にした特養「寿都寿海荘」(以下寿海荘)の移転新築工事(来年6月に供用開始予定)である。これまで町内の歌棄地区で運営されてきた施設を街中の海進地区に建て替えるもので、事業主体は徳美会とされているが、約20億円の事業費は過疎債を使うなどして全額寿都町が補助。公益性が高い事案とはいえ、事実上、役場が丸抱えで社福の施設を建て替える形になっている。