“核のゴミ”レポートPART35 最終処分地の選定に影響を与える寿都町議選の行方
小さな町の大きな選択

2023年10月号

漁業や水産加工業に従事する住民が多い人口2700弱の寿都町。原発城下町の岩内は漁業者の減少が著しいが、寿都では漁港や関連施設が整備され水揚げ高を維持してきた

いま、地元振興と片岡町政のチェック機能を果たす議会へ


10月3日、“核のゴミ”最終処分場の候補地選定に向けた「文献調査」が終わった後志管内寿都町で、町議会議員選挙が執り行なわれる(告示は9月28日)。有権者数は2330人。9月初めまでに定数9に対し11人の立候補が確実視されており、少数激戦の様相に──。基幹産業である漁業と水産加工業の活性化をはじめ、少子高齢化や子育ての対策、観光振興など課題は山積しているが、「概要調査」の是非を問う住民投票が焦点になる中、議会側が片岡町政をどうチェックしていくのか、その試金石になる選挙といえる。立候補予定者の顔ぶれや核ゴミ問題をめぐる町議会の経緯、さらに事前調査の行方など寿都町議選の周辺を取材した。

(ルポライター・滝川 康治)

定数9に対し立候補予定者は11人、少数激戦の様相を呈す


 8月25日に寿都町選挙管理委員会が開いた立候補予定者に対する事前説明会には、次の10陣営の関係者が出席した(前回の得票順に掲載)。
 現職では、㈲マルホン小西漁業部役員で議長の小西正尚氏(68・現在9期)、建設会社役員で副議長の石澤洋二氏(67・同8期)、魚類販売業の川地正人氏(59・1期)、漁業者の木村眞男氏(66・4期)、浄土真宗僧侶の友山大信氏(75・1期)、共産党公認の幸坂順子氏(74・3期)と、2021年の補欠選挙で初当選した水産加工会社社員の吉野卓寿氏(32)の7陣営。
 元職では、町助役を経て町議を4期務め、一昨年の町長選に出馬し、現職の片岡春雄氏に惜敗した農業者の越前谷由樹氏(71)。新人では、水産加工会社社員で「子どもたちに核のゴミのない寿都を! 町民の会」メンバーの大串伸吾氏(39)と独自の核ゴミ反対運動を続ける田原誠氏(74)の2陣営である。
 さらに説明会の後、前教育長の早瀬良樹氏(71)が出馬の意思を固め、あいさつ回りなどを始めたという。
「新たな立候補者が現れるのではないか」との声も聞く。したがって、9月25日に町選管が実施する事前審査には、定数9に対し、少なくとも11陣営の出席が確実視される。
 地縁や血縁が入り乱れ、地方自治に対する考え方よりも、有権者受けする人物かどうかで勝敗が左右されるのが、寿都に限らず田舎町の議員選挙の常だ。核ゴミ問題がなくても、基幹の水産関連業の振興をはじめ、少子高齢化や子育ての対策、観光振興といった喫緊の課題も多い。
 しかし、住民に対する丁寧な説明や合意形成のプロセスを蔑ろにして、“肌感覚”で文献調査の応募を急いだ片岡町政のチェック機関として議会の果たす役割は大きい。「概要調査」に入る前には、町条例に基づいてその是非を問う住民投票が実施することも決まっている。来年中にも予想される住民投票や最終処分場問題の行方を窺う意味でも、今回の町議選の動向から目を離せない。

前回町議選の得票数など(出典:『広報すっつ』2019年11月号)

19年町議選の当選議員たち。21年、町長選出馬に伴い越前谷由樹氏が辞職し、補選で1121票を獲得した吉野卓寿氏が初当選(出典:『広報すっつ』2019年11月号)

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江差パワハラ裁判で初弁論

自公大敗は本当に「政治とカネ」だけだったのか!?

「批判派の議員を5人に」と力説する越前谷氏

町議補選で初当選した吉野氏(右)と、今回選挙に立候補する大串伸吾氏
(21年10月撮影)

図.NUMOなどが描く最終処分場の選定に向けたプロセス

前回町議選の得票数など(出典:『広報すっつ』2019年11月号)

19年町議選の当選議員たち。21年、町長選出馬に伴い越前谷由樹氏が辞職し、補選で1121票を獲得した吉野卓寿氏が初当選(出典:『広報すっつ』2019年11月号)

「批判派の議員を5人に」と力説する越前谷氏

町議補選で初当選した吉野氏(右)と、今回選挙に立候補する大串伸吾氏
(21年10月撮影)

図.NUMOなどが描く最終処分場の選定に向けたプロセス

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