地元紙・80年めの迷走〈13〉
編集幹部 また自殺か

2023年09月号

これまでにない事態に、さらなる若手の離職加速も予想される(札幌市中央区の北海道新聞本社)

北海道新聞で現場に動揺 半年間に2人急逝の衝撃

年明けに常務取締役が急逝した北海道新聞(札幌市中央区、宮口宏夫社長)で編集幹部がまた1人、自殺とみられる状況で亡くなったことがわかった。直後から社内では過労やパワーハラスメントを疑う声が湧き起こり、背景の詳しい説明が求められ始めたが、充分に社員たちの腑に落ちるような報告は未だない。僅か半年の間に幹部の訃報が相継ぐ事態に、編集現場では社への不信感が頂点に達しつつあるようだ。


取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。54歳

拡散したハラスメント説 急逝の背景は知らされず


 本年1月中旬に北海道新聞の常務取締役(62)が亡くなった経緯は、本誌3月号で詳報したところだ。のちに伝わった新たな情報によれば、自ら命を絶ったとされる常務は近い過去にも1度、未遂ながらその衝動を実行に移していたという。事実ならば、さらに勤務先がそれを把握していたとすれば、当時の証言者らが口にした「会社に殺された」との批判は起こるべくして起こったと言える。
 とはいえ関係者の多くは、僅か6カ月後に同じ悲劇が繰り返されるとまでは予想できなかっただろう。本誌前号発売直前に世を去ったその人は、では何に“殺された”のか。


 7月上旬の日曜日。
 前週半ばから休みをとっていた道新の編集局次長(53)がその日午後に急逝した事実を、勤務先はいくら遅くとも翌日までに把握できていた筈だ。だが社員向けの訃報が出たのは、当日から2日が過ぎた火曜日のこと。それを待たずに月曜の夜から関係者間を駆け巡った逸話は、確定的な情報が乏しい中で故人と親しかった社員らの間で共有されたものだ。
《自殺らしい》《旭川のデスク人事で社長が激怒》《原案作成した局次長を局長が叱責》《それで出勤できなくなって》――。
 職場のパワーハラスメントを強く疑わせるこの説は短時間で拡散することになるが、社内には別の見方を採る向きもあった。本稿記者の耳にも、この3日後の時点で次のような声が届いている。
「旭川の人事で現地の部長とやり取りしていたのは、亡くなった彼ではなく別の局次長。自殺は間違いないが、パワハラが原因ではない」
 一方、飽くまでハラスメントの可能性を疑う証言もあり、声の主としてはそれ以外に合理的な理由が考えられないという思いがあるようだ。札幌本社に勤める中堅記者の1人は、こう話す。
「否定する人たちは彼が地方の人事に関与していなかったと言いたいようですが、彼は地方版を担当する編集局幹部に違いなく、旭川の人事も把握すべき立場です」
 では、会社はどういう見解か。結論を言えば、社としてはハラスメントを否定しつつ急逝の背景についてほとんど何も明かさない方針のようだ。先の訃報の翌日、つまり局次長が亡くなった日の3日後、編集局報道センターの部会ではセンター長による次のような報告があったという。
「彼は旭川の人事の担当ではない。叱責したとされる編集局長は同期で、冗談も言う気さくな人。パワハラは見たこともない。詳細は把握していないが、私も局長もショックを受けている」
 この時、部員たちに伝えられた死因は「心不全」。以後もこれが維持され、公式には今も自殺の疑いが伏せられている。正確を期すなら、社は自殺を否定も肯定もしていない。
 ひいては、亡くなった理由が明かされることもないままだ。

同期記者による追悼記事は、自殺の文言こそ登場しないもののそれと察せられる筆で綴られている(7月28日付『北海道新聞 社報』)

社長は局次長の通夜に参列せず、地元球団を応援する会で杯を傾けることを選んだ(交流会の模様を伝える7月中旬の『北海道新聞』記事)

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