本誌が“暴走経営”を報じたネクステップの現在
新居会長と来生社長の両輪で失われた信頼関係回復に尽力

2023年05月号

企業としての再出発に意欲を語った来生淳二社長
(札幌市内の村松法律事務所)

本誌が昨年報じた北洋銀行の親密企業、不動産業のネクステップ(本社・札幌市中央区)の水口千秋社長(当時・67)の暴走経営は、関係者の大きな反響を呼んだ。報道後、ほどなく水口氏が退任、後任の濱岸春尋新社長(当時・61)の下で第三者によるガバナンス委員会が問題の検証を行なったが、その濱岸氏も昨年8月に退任する経緯を辿った。そんな中、ネクステップ元社長の新居隆氏が会長に復帰。新社長の来生淳二氏と共に会社の正常化に向けて取り組んでいるという。会社の再生に取り組む2人に“事件”の総括と現状を訊いた。

(3月13日取材 佐久間康介・工藤年泰)





旧経営陣に損害賠償を請求


 ──私たちの報道以降、貴社の顧問である村松法律事務所(札幌市中央区)の協力でガバナンス委員会が設置され、調査報告書で再発防止策などが提言されたと聞いています。
 新居
 ガバナンス委員会の調査期間は昨年3月9日から5月末までで、水口元社長をはじめ取締役全員にヒアリング、全従業員にアンケートを実施して旧経営陣の問題点と今後に向けた提言をいただきました。
 ご指摘の通り、水口は公私混同を疑われる件を含めさまざまな不適切な行為を行なったわけですが、それを組織的に防御する仕組みがなかった。取締役会に防御機能を持たせ、取締役の行動にも牽制機能が働く組織を作るべきというのが提言の骨子です。非公開企業とはいえ、社外取締役、社外監査役の導入提案もいただき実行しました。また、当社の取締役会規定や職員の人事評価制度、内部通報制度など規約も不十分な面があったので、それらも見直しました。
 ──水口さんは自ら辞めたということですが。
 新居
 報道があった昨年2月の定時株主総会後の取締役会で水口が会長になり、副社長だった濱岸が社長になりました。その直後に水口から辞任の申し入れがあったと聞いています。
 ──水口さんの後で社長になった濱岸さんもほどなくして辞任した。
 新居
 彼が辞めたのは体調面の理由が大きい。ネクステップにとって重要な時期でしたので、本人としてこれ以上続けていくのは無理だと判断されたようです。
 来生 当時、さまざまな事案が取り沙汰される中で濱岸は社員とのコンセンサスが取れない状態になり、私が見ていた限りでもかなり辛そうでした。
 新居 彼は昨年8月5日の臨時株主総会で取締役を辞任しました。その臨時株主総会で私が取締役に就任し、会長に就いたという流れです。
 ──今回の件で、何らかの処分はあったのでしょうか。
 新居
 昨年4月から取締役の減俸を行ない、来生を含めて当時の取締役には賠償責任を負ってもらい、すでに全員が支払いを済ませています。

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