告発・絶望の学府㉔
在学生自殺、パワハラ認定

2023年05月号

第三者委の会合は非公開で進められたが、事後の記者会見で調査結果の概要が明かされることに
(3月24日午前、札幌市内)

江差看護・第三者委が結論 道、5月にも遺族に謝罪へ

事態の表面化から丸2年が過ぎた公立看護学校のパワーハラスメント問題で、最大の被害といえる在学生の自殺事案を調査していた第三者機関の結論がまとまり、自殺とハラスメントとの因果関係が認定された。複数の元教員・元学生らへの聴取であきらかになったのは、学内で横行していた不適切な教育の実態。志半ばで力尽きた男子学生は、長く学校に根づいた理不尽な指導に追い詰められていた。謝罪を口にした加害者は、今のところ1人もいないという。


取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。54歳

「ふるい落とし」の標的に


 3人の教員による4件のハラスメントに、その事件との因果関係が認められたという。背景にあったのは、北海道立看護学院の特異な教育方針だった。
「ハラスメントを許容する雰囲気や指導のあり方について、学校全体として問題があったと考えます」
 そう報告するのは、江差看護学院で起きた在学生自殺事案の調査にあたっていた第三者委員会(須田布美子座長、委員3人)。前年度末の3月24日午前、委員らは発足以来4度めになる会合を終え、調査結果の概要を報道陣に伝えた。
「亡くなられた学生さんは1年生の時からずっと“育てる教育”ではなく“ふるい落とすような教育”に精神的な負担を募らせていき、2年生の時には提出期限にたった1分遅れたことでレポートを受け取って貰えず、1年間の留年をしています。これが学院に対する希望や信頼を失う大きな要因となり、さらに3年生の実習で複数のパワーハラスメントを受けたことで死を考えるようになったと」
 最終的に自殺の決め手となったのは、学院の教育への絶望だった。座長の須田布美子弁護士(札幌弁護士会)が続ける。

報告を受けた北海道の担当課長はカメラの前で陳謝したが、本来頭を下げるべき加害教員らは現時点で謝罪の意を示していない

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亡くなった学生の第一発見者となった教員らは現場からまず学校へ報告を入れ、次いで警察に連絡、ついに救急へは通報しなかったことがわかっている(檜山管内江差町)

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