寿都町漁協の“黒い霧”を追う
基幹産業、危うし─

2023年04月号

寿都町漁協が運営する製氷工場と市場
(写真は寿都漁港)

経営の悪化で弱体化する統治 ナマコで囁かれる反社の関与

いわゆる“核のゴミ”の最終処分地選定に向けたNUMO(原子力発電環境整備機構)の調査受け入れを表明して物議を醸し、全国的に耳目を集めた後志管内の寿都町。今回はそんなまちの別の側面、基幹産業が抱える危うさを報告したい。水産のまちを支える寿都町漁業協同組合(小西正之代表理事組合長)では近年経営が悪化し、2年あまりの間で組合長の交代が繰り返されるなどガバナンスが漂流。そのような中で“海の黒いダイヤ”と言われるナマコをめぐり、浜ではきな臭い話も流れている。寿都湾の豊かな恵みを受ける漁協で、いま何が起きているのか──。

(本誌編集長・工藤年泰)


まちを背負う寿都町漁協


 事件の舞台、寿都町はまさに漁業のまちと言っていい。同町のホームページには次のような歴史が紹介されている。「町史によると1600年代に豊富なニシンを背景に和人が集落を形成し、住み着いたことがまちの始まりとされています。以来、寿都町は漁業を中心に発展してきました。200海里問題以降は沿岸漁業に移行し、比較的穏やかな寿都湾の特性を活かしたつくり育てる漁業を展開し現在に至ります」
 寿都町は寿都湾を取り囲むように形成されており、面積の大部分を山林と原野で占める。山地が海岸に迫る地形となっており、農業に向いた耕作適地は、ほんのわずかしかない。まちの経済はいきおい水産関係に頼る構図となっている。
 このようなまちの中心に座るのが寿都町漁業協同組合(正組合員110人)だ。
 市のHPで紹介されている、寿都町漁協における2021年度の水揚げ高は約9億5千万円。近年は14、15億円で推移していたが、この年はコロナ禍の影響もあって落ち込んだもようだ。100億円前後がザラのオホーツク海沿岸などと較べると、規模が小さいように感じるかもしれないが、人口2700程度の地方都市にとって、その存在は絶対的だ。町内には製造業を営む事業所が10軒ほどあるが、そのほとんどが漁協と取引する水産加工業者であり、市内の総出荷額は約35億円にのぼるという。
 その寿都では何が水揚げされているのか。2021年度の数字を見てみると、生炊き佃煮が有名な小女子(コウナゴ)や寿都ブランドの「寿がき」、定番のサケやホッケのほか、ひときわ目立つのが43トンあまりで2億6千万円を稼いでいるナマコだ。最も水揚げ量が多いサケが400トンあまりで3億円強で、ナマコとサケが寿都漁協の大きな収入源となっているのが見てとれる。
 中国では乾燥ナマコがフカヒレやツバメの巣と並ぶ高級食材扱いで、近年は海外からの引き合いが高まったことで国内価格が高騰。「海の黒いダイヤ」とも呼ばれるようになり、その結果、各地の浜で増加したのが密漁だ。

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