地元紙・80年めの迷走〈10〉
どこへ行く、道新

2023年03月号

現社屋の敷地には遠からず商業ビルが建つことになり、将来の不動産収入増が目論まれているが…
(札幌市中央区の北海道新聞本社)

常務急逝、若手の離職加速 創刊81年め、昏迷の幕明け

「80周年」に極まったかに見えた迷走は、年明け以降も収拾のつく兆しがない。1月中旬に伝わった役員の訃報をめぐっては早くから自殺説が囁かれ、内外に複数の怪文書が出回った。現場では若手社員の退職が相継ぎ、4月人事の“内々示”が延期される事態に。裁判になった情報漏洩事件や主催文学賞の盗作疑惑などの問題も残る今、北海道新聞(札幌市中央区、宮口宏夫社長)はどこへ向かおうとしているのか――。


取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。54歳

「それが最後になるとは」社報の最終面に追悼記事


《新本社ビル着工/来夏完成「愛されるシンボルに」》
 1月31日付『北海道新聞 社報』トップ記事の見出しだ。来年8月の竣功が見込まれる同社新社屋の着工を伝えるレポートには、地鎮祭で鍬を持つ宮口宏夫社長の写真が添えられている。同じ紙面には新年交礼会の模様も採録され、そちらの見出しには社長の年頭挨拶から「『北海道専門紙』を追求」の文言が採られた。
 頁をめくると、第1面から2面にかけて掲載された写真3枚がいずれも同じ人物、つまり自社の社長を捉えた写真であることがわかる。一般紙ではあまり見られない構成だが、社報では「あり」ということらしい。続く3面も年初らしい慶事的な話題が展開され、4面、5面には人事や福利厚生などの情報。一転して趣きが変わるのは、最終面にあたる第6面だ。
 社報を締め括るのは、年明けに急逝した役員の追悼記事。62歳で他界したその人の正確な肩書きは「常務取締役管理統括本部長兼企画室長」と記されている。ほぼ全面が割かれた「弔辞」は宮口社長の筆になるもので、その後半に盛り込まれた逸話の一節に「最後の打ち合わせ」なる文言。社長は、常務が亡くなる前日に本人と「打ち合わせ」をしていたのだという。
《いつも通り経営に関する情報共有を済ませ、「これで解散しましょう」という私の言葉を合図にあなたは椅子から立ち上がりました。それが生前のあなたを見る最後になるとは、その時は夢にも思いませんでした》
 冒頭に記した通り、これが掲載されたのは1月31日付の社報。ただ、弔辞そのものは同月中旬にあった告別式で読まれていた。
 道新社内に複数の怪文書が出回り始めたのは、この間のことだ。いずれも、亡くなった常務の死因を「自殺」と断じていた。

社内向け〝新聞〟の第1面は前向きな話題で埋め尽くされた
(1月31日付『北海道新聞 社報』)

中和興産
幕が開いた「杉澤劇場」

ヒグマ駆除裁判で逆転判決
全面敗訴にハンター動揺

自殺学生遺族陳述
江差パワハラ裁判で初弁論

自公大敗は本当に「政治とカネ」だけだったのか!?

急逝した常務は有能ゆえに「会社に都合よく使われがち」だったといい、自殺が事実ならば深刻な労働災害にあたる可能性がある(通夜・告別式があった札幌市内のホール)

取材メモ漏洩の経緯は道新自身が2年間伏せ続けたのみならず、被害者も口外することがなかった(帯広市の北海道新聞帯広支社)

社内向け〝新聞〟の第1面は前向きな話題で埋め尽くされた
(1月31日付『北海道新聞 社報』)

急逝した常務は有能ゆえに「会社に都合よく使われがち」だったといい、自殺が事実ならば深刻な労働災害にあたる可能性がある(通夜・告別式があった札幌市内のホール)

取材メモ漏洩の経緯は道新自身が2年間伏せ続けたのみならず、被害者も口外することがなかった(帯広市の北海道新聞帯広支社)

中和興産
幕が開いた「杉澤劇場」

ヒグマ駆除裁判で逆転判決
全面敗訴にハンター動揺

自殺学生遺族陳述
江差パワハラ裁判で初弁論

自公大敗は本当に「政治とカネ」だけだったのか!?

目次へ

© 2018 Re Studio All rights reserved.